恐れていたことがやはり起きた。過激派組織「イスラム国」(IS)が占領中の荘厳な世界遺産都市、シリアのパルミラ遺跡の神殿を相次いで破壊したのだ。この蛮行がこれ以上放置されてはなるまい。
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「パルミラを救え!」。ネットを通じた国際的な運動が今こそ必要だ。
消えた神殿
衛星写真を分析し、消失を確認
ISの今回の悪行が明らかになったのは8月25日のこと。中心的な遺跡の1つである「バール・シャミン神殿」を爆破、木っ端みじんに吹き飛ばしたことを自ら、画像を公開して誇示したのだ。神殿は紀元1世紀に建立された雨と豊作をもたらす神を祭る建物で、大きな柱が有名だった。
国連がその後、同遺跡の衛星写真を分析し、神殿が消失したことを確認した。ISの戦闘員の1人はツイッターで「異教徒の神殿だ。アッラー(神)以外を祭る場所を今後も破壊する」とうそぶいた。
30日になって今度は、同遺跡の象徴的な存在でもある「ベル神殿」が爆破されたことが英国のシリア人権監視団から発表された。同神殿はパルミラ遺跡最大の神殿で、同日に爆破されたという。神殿は200メートル四方という大きな規模。紀元32年に世界を支配するという神、ベルに奉献されるため本殿や祭壇が築かれ、その後、正門や列柱も建設された。神殿の天井や壁には壮麗な文様が刻まれている。
この神殿が完全に爆破されたかどうかだが、国連はほとんどの建物がなくなっていることを衛星写真から前者と同様に確認した。
AP通信によると、パルミラの住民の1人は「完全に破壊された。ろうあ者も聞こえる程の爆発音だった」と述べており、神殿が破壊されたのはほぼ間違いないだろう。筆者もパルミラを訪れ、神殿の壮麗さに感動したことがあるだけに残念でならない。
パルミラは中東の「3P」の1つと呼ばれ、イランの「ペルセポリス」、映画インディジョーンズの舞台になったヨルダンの「ペトラ」と並び称される世界遺産だ。首都ダマスカスから北東約230キロ、シリアのほぼ中央に位置するシルクロードの隊商都市である。紀元前1世紀から紀元3世紀まで栄え、ほぼローマに支配されていた。