Wedge REPORT

2015年9月21日

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――時間単位の生産性を上げる努力をしないと制度の実効性はない

山本氏:別の調査では、日本のグローバル企業で働くホワイトカラー管理職者(ほとんどが労働時間規制の適用除外者)がイギリスとドイツに転勤し、現地法人で働いた場合の平均の労働時間の変化を分析した。その結果、欧州に転勤した場合の労働時間が、週2~3時間も減少した。なぜ減っているのかと言えば「同僚が残っているから長くいなければならない」というメンタリティが減っているからだ。ヨーロッパは効率的に働いているので、その影響を受けて数時間の労働時間が削減されていると考えられる。当然転勤に伴って、仕事の内容は変わるので、仕事の量・裁量の有無・チームでの仕事かどうかなどの内容は統計的にコントロールしている。この調査は、日本企業では『1週間に2~3時間の「成果を伴わない残業」が発生している』ことを示唆している。

 経営層としては「部下がダラダラ働いていないか」を見抜き、非効率な時間を潰していくことが必要だ。「週の労働時間が10時間延びるごとに、翌年、課長に昇進する確率が3%上がる」という長時間労働が昇進に有利になるとの調査結果もある。長時間労働をしていると成果に関わらず「あの人はがんばっている」と見えてしまい、昇進しやすいということはあるのかもしれない。その日本独特の企業文化が変わっていかなければならない。

研究の概要

 「脱時間給」制度を導入した場合、ホワイトカラーの労働者の労働時間が週間でどう変わるのかをシミュレーションで試算した。慶応義塾大学が2004年から08年まで継続して行った4000人規模の個別調査の結果を用いた。調査期間中に残業代のつかない管理職に昇進した者は、昇進前後の労働時間を比較して、同一人物の労働時間の変化を見る。

 一方、調査開始時に既に管理職だった者については、残業代がつく者の中から産業や企業規模、職種といった属性の近い者を探し出し、その労働時間を調査対象者の仮想的な労働時間としてシミュレーションした。こうすることで、実際には観察できない労働時間を仮想的に求めた。

 研究の詳細は『労働時間の経済分析』(日本経済新聞出版社)に収録。早稲田大学の黒田祥子教授との共同研究による本書では、「メンタルヘルスと企業業績の関係」や「日本人は働くのが好きなのか」など働き方についての全般的な検証・提言を行っているので参照されたい。(http://www.nikkeibook.com/book_detail/13451/

  
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