久松 その割を食って職を失う人も出てくるのは事実だけど、木下さんの言葉を借りればその人たちはもっと「攻め」の部門に向けられるべき資源なんですよね。でも記帳だけでメシを食っている税理士とか、たくさんいるからね。
木下 すでに意味のない作業になりつつありますよね。機械ができることを人間がやってはいけない。それは人が減っている地方ほど徹底しなければならないことと思っています。
久松 強みに特化しなければいけない。
木下 機械に任せられることを任せれば固定コストも安くなるし、固定業務も少なくなるから、自分たちの強みや創造的な作業に集中できるんです。
久松 結局はやる気だけの問題で、やりようはいくらでもありますよね。
木下 そう思います。以前は情報関連のシステムには膨大な投資が必要で、コンビニ大手のような巨大な資本をもったところだけが、POSによる情報システムを作ることができた。しかし、今ではクラウドサービスで同様のことができる。組み合わせだけで実現できるんです。
資本の規模から効率の時代に移りつつあって、どれだけ過去に成長した大きな会社でも、資本効率の悪いビジネスをしている限りはダメになっていく。資本力は小さくとも資本効率の高いビジネスをしている中小零細は、独自のビジネスを伸ばしていく。資本力勝負の時代はもはや終わりつつあると思っています。
久松 現段階では「終わっている」とまではいかなくても、資本力勝負を避ける方法がいくらでもあるということですよね。小さなプレイヤーが資本力で勝負するような場所に行ってはいけない。
木下 その通りです。どれだけ資本力があっても、とくにサービス分野では資本効率の悪い業種は低迷の一途をたどっていて、過去の遺産で食べているのに等しい状況です。企業は事業内容が多様なので、厳密に見れば資本効率が劇的に悪い事業を、新規の事業で支えているパターンもたくさんある。これは行政も一緒だと僕は思っているんですよ。
この前、ある大手書店チェーンの社長さんとご一緒する機会があって、お話を聞くと経営についてものすごく悩んでいる。でも独立系の書店をやっている人に話を聞くと、「楽しくてしょうがない」という言葉が返ってきたりします。この対比がまさに「今」だな、と思うんです。図体が大きいかどうか、ストックが大きいかどうかではなくてフロー、つまり利益率がいいかどうかで決まるようになりつつあると思っています。