2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2005年6月20日

 「侃々諤々」といっても一言で表現できる作業ではない。ある県の事例だが、「青少年育成」という事業項目があり、内容は「子どもを公園に連れていきポニーに乗せている」という。それは不要だろうというこちらの指摘に、県の担当者は「青少年の育成は自治体がちゃんとやらなくてはいけない」と返してくる。事業の名称ではなく実際の内容で判断すべきなので、こちらは「青少年育成は確かに大事だが、馬に乗せる必要があるのか」と問いかけるが、担当者には予算の費目である「青少年育成」という認識でしか頭に入っておらず、「青少年育成は大事だ」とくる。このようなやりとりが数十分続くのだ。これに似た意見のぶつかり合いや固定観念の解きほぐしの光景が繰り返される。

 結果の詳細は構想日本のホームページをご覧いただきたいが、不要あるいは民間に任せる(行政が手を離す)事業は、市町村、都道府県ともに歳出金額で約10%となった(図1の①)。限られた時間内のチェックなので(例えば新潟県では、5班に分かれ2日間で約4300事業を仕分けた)、数字はかなり低めに出ていると考えられる。時間をかければ、その割合はずっと増えるはずだ。作業結果を全体に引き延ばすと、地方自治体全体の歳出額(普通会計)が約95兆円なので、まずは約10兆円削減できるということだ。分野別では、行政が手を離すべきとされた事業が一番多かったのは商工や産業労働の分野で、歳出金額の9割近くにのぼった。例えば商工会議所運営補助金(自前の財源で)、情報誌作成事業(効果に疑問)、中小企業優良従業員表彰事業(各企業/業界自身で)、観光宣伝事業(民間で行った方が効果的)等である。図2に、昨年12月に行った横浜市の作業の例を挙げた。

 一方、引き続き自分の所でやるべき事業は、平均で市町村が71%、都道府県で60%となった(市町村の割合が高いのは、県よりも住民生活に密着した仕事をしているからだろう)。どの自治体でも同様の結果が出ていることから、これらの数字にはある程度共通性があると思う。

 国、地方などの仕事の分担の再整理は必要だが、少なくとも現在自治体が行っている仕事の3~4割は自分のところではしなくていい、と職員自身が考えたという事実は重要だ。加えて、自治体の多くの職員にとってこの「事業仕分け」作業が、外部との激論を通じて、ほとんど初めて事業の意義を真剣に考える場となったという教育的効果も大きい。参加者からは、「なるほどと思う意見もあり、事業本来の必要性を考えるきっかけとなった」、「対立点のみが強調されがちな民と官の関係について、本質的な議論がオープンにできた」などの感想が多く聞かれた。

「国のコントロール」なくし独自にコスト削減

 事業の仕分けと同時に、自治体に無駄な仕事(不必要なもの、必要以上にお金をかけているものなど)をさせている、国の規制や基準も事業ごとに調べた。新潟市の例でいうと、これらによるコントロールの度合いが最も大きいのは土木と福祉で、続いて教育、農水、衛生となった。

 この関連で、国の基準によらず自前で道路整備を行うことで、コストを大幅に削減した自治体を紹介したい。長野県栄村(高橋彦芳村長)では、国の補助金を受けずに村の支出と集落の自己負担金を使って、村の交通事情に合った仕様で臨時職員が施工している。道路1 当たりの事業単価は1.9万円だ。もし、補助金をもらい国の基準(道路構造令)に従って整備すると、単価は11.1万円と約6倍に跳ね上がる。


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