これを特殊なケースと見るべきではない。国の基準に従い補助金をもらっても村の支出も増える。だから栄村のようなお金のないところはぎりぎりの努力をしているのだ。このような努力は日本全体でできる。「三位一体改革」の本来の趣旨も、補助金カットと同時に「国のコントロール」をなくし自治体の工夫を活かすことにあったはずだ。こうやって「仕事のやり方」を見直せば、6分の1とは言わないが相当の歳出が減る。
もう一つだけ、歳出削減に有効な手法を示しておこう。行政が行っている事業の本当のコスト(フルコスト)を算出するのだ。国や自治体の予算では、人件費や施設への投資、更新のコストは事業費の中に入っていない。せっかく、国でも企業会計的な財務諸表をつくり始めたのだから、これを活かして行政サービスごとの「フルコスト」を示すべきだ。民間の方が安くつくからといってすべて民間でやるべきだとは思わないが、これをやってはじめて「市場化テスト」も実用化できる。現に群馬県太田市は構想日本と協力して、予算編成に活かしている。
消費税上げばかりではなく現実的な議論を
以上の作業は、前述の12の自治体の首長が「よし、やろう」ということで可能になった。しかし、国の予算についてはどこの省も今までのところ「やろう」とは言ってくれない。そこで大変乱暴ではあるが、10省の「所掌事務(各省の設置法に規定されている担当事務のリスト)」をランダムに選んだ数十人の人に仕分けてもらった(10省で計745項目)。抽象的な事務項目にすぎないが、やめるべき(不要/民間)事業は、事務数の20%となった(図1の②)。ちなみに、その割合が高かったのは、経済産業省(37%)と文部科学省(34%)、続いて農林水産省(21%)、国土交通省(20%)だった。国の場合は、年金や医療など制度によって歳出額が決まるものもある。しかし、「事業仕分け」による歳出項目カットと各項目ごとの「仕事のやり方」の見直しは、このまま応用できる。一省いや一局でもいいから「うちでやろう」と言う勇気ある発言を切に望んでいる。また、政府としても、そのような省には、新規事業を優先的に認めるようなインセンティブを与えることを提案したい。
財務相の諮問機関である財政制度等審議会は、プライマリーバランスを均衡させるには、2015年度に、国の歳出を3割削減するか、消費税率を19%に引き上げる必要があるとの試算を出している。企業のリストラでよく言われることだが、コストの1割カットができなくても、5割というようなべらぼうな目標を設けると逆にさまざまなアイデアが生まれ、その結果クリアできたりする。乱暴ついでに言うと、予算項目で3割減らし、各項目ごとにコストを3割減らせば予算総額は半分でいいことになる。2015年などと悠長なことを言ってると、それ自体が国の信頼をそこね、 村上ストーリー が現実になってしまいかねない。
「事業仕分け」など、手段はすでに揃っている。構想日本と協力者にノウハウも十分蓄積できている。「3年間で5割歳出削減」くらいの目標を設定し、外部の目を活用して財政の大革新を断行すべき時だ。小泉構造改革で歴史的に評価されるものはほとんどないだろうが、これ一つ断行すれば日本中興の祖になれるかもしれない。