2022年9月26日(月)

コラムの時代の愛−辺境の声−

2015年11月4日

»著者プロフィール
閉じる

藤原章生 (ふじわら・あきお)

記者・作家

記者・作家。北海道大学工学部卒。1989年より毎日新聞記者。ヨハネスブルク、メキシコ市、ローマなどに駐在。2005年、『絵はがきにされた少年』(集英社)で開高健ノンフィクション賞受賞。近著に『ぶらっとヒマラヤ』(毎日新聞出版)。
 

 

 脳スキャンなどさまざまな技術の発達で急速に進む神経科学の世界では過去10年ほど、人間の感情についての研究が盛んに行われてきた。だが、喜怒哀楽などさまざまな感情の中でも実際に研究対象になる9割方は、恐怖についてだ。恐怖は扁桃体と呼ばれる部位の神経回路に関連している。扁桃体は側頭葉の内側の奥にある、進化の過程では割と古い部分で、一度ためた記憶を重要度などで振り分ける働きも担う。

恐怖を取り除けば差別は薄まる

 差別が恐怖からきているのだとすれば、恐怖を取り除けば、差別は薄まるとも言える。

 恐怖といっても、大きな怪物に襲われる恐怖といったその場限りのあからさまなものだけではない。まだ見ぬ未来への不安も恐怖のひとつとみなすこともできる。自分の地位、安定が揺らぐ、将来、下り坂になる、何かを失う……。明らかに自分が優位に立っているにもかかわらず、いずれなにがしかの報復を受けるかもしれない、自分に被害が及ぶかもしれない、自分の気分を害すかもしれないといったことも含めて。

 ではどうやって恐怖を取り除くか、これには啓蒙や慣れなどいろいろと手法はあるだろうが、大事なのは、差別には恐怖が絡んでいると自覚することだと思う。

 人を差別するとき。それは一見見下しているという、上に立つ者の意識からきていると思いがちだが、それだけではない。自分は恐怖を抱えていると思えば、自己処理の仕方も変わってくるのではないか。トルコ人の乱闘から、そんなことを考えた。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る