また、観光にも影響を及ぼしているのも特徴。地方では、タクシーが少なく、移動が不便だったことから、観光地に自転車を持ち込むことも広がっていった。タイ政府観光庁は「行くべきタイの自転車12ルート」という大々的なキャンペーンを打ち出し、北部ナーン県、中部のサムットソンクラーム県、東部のチャンタブリー県、トラート県、南部のトラン県などが、現在も自転車を利用する観光客誘致に躍起になっている。
2014年、観光先での自転車利用者は32万人となり、売り上げは11億バーツ(37億4000万円)だった。内訳でみると、3万5000人が外国人(11%)であり、多い順に国別では、ヨーロッパはオランダ、ドイツ、スイス、イギリス、アジアは中国、日本、台湾、東南アジアはマレーシア、インドネシア、シンガポール。2015年、観光先での自転車利用者は40万人にも上り、売り上げは13億5000バーツ(約45億9000万円)を見込んでいる。
現在、バンコク都内で自転車が走れる道は31あり、バンコク首都圏交通・輸送事務局の調査によれば、整備すれば、242まで増やすことができるという。また、自転車を持っていない人向けにも、バンコク都庁はレンタルバイクを用意。中心地のシーロムやサイアム周辺では、320B(約1,200円)のカードを購入すれば、すぐに利用可能だ。さらに政府は国策として、各県に自転車のための公園、道路を整備するよう呼びかけ、補助金も拠出するというから本気度は相当なものだろう。すでに9県がスタートしている。
そして、現在注目されているのが、タイ最大の自転車イベント「Bike for Dad」。12月11日、バンコクのみならず東京ほか世界の大都市で同時開催されるこのイベントは、絶大的な支持を集めるプミポン国王の誕生日を記念するもので、プラユット暫定首相が率先して推し進めるなど、先に行われた「Bike for Mom」以上のビッグイベントになるとみられている。慢性的な渋滞問題もあり、まだまだ自転車ブームは加速していくだろう。
ますます広がりをみせるタイの自転車ブームについて、日本人居住区でもあるエカマイの自転車専門店「EKKABIKE」https://www.facebook.com/Ekkabike.ekamai12 のオーナー・ガントーン氏にインタビューを行い、現状のブームについて語ってもらった。
ー現在の自転車ブームの加熱ぶりについてどう思うか?
ここ数年は、20〜30%という高い数字で利用者が増えているね。その流れは、バンコクだけではなく、チェンマイ、プーケット、コンケーン県、ウドンターニー県といったところでも同様。10年ほど前、日本やアメリカなどに留学した人たちを中心にBMXがファッションとして流行し、7、8年前からは、ロードバイクがスポーツとして広がり、大会も普通に行われるようになった。
ただ、ロードバイクは部品が高かったため、当時は富裕層が多かったね。4、5年前から健康志向と相まって、一般的にも普及。去年から、政府も熱を入れ出し、地方でもイベントが行われるようになるなど、ようやくブレイクした。最近の流行は、観光地で乗ることで、SNSの影響もあって、今後もユーザーは増えていくだろうね。
ーまだまだ広まっていくと?
政府の施策として、スワンナプーム空港近くにバイクレーン「スカイレーン」がオープンする。専用のクラブハウスなどもでき、ID認証のためのリストバンドが導入されるなど、設備面でも十分。施設が整った人口バイクレーンとして、世界的にも有名になるだろうね。また現在、タイでは道路にバイクレーンを設置する政策も検討されている。今、注目されているのは、東北部チャイナート県にできる長さ180キロのバイクレーン。これが建設されれば、東南アジア最大のバイクレーンが誕生する。政策にも注目している。
ーショップの売り上げはどうか?
2ヵ月前にオープンしたばかりだが、日に日にお客が増えている。お客さんは全体的に富裕層が多いね。取り扱うブランドは、GIANT、FOCUS、KUOTA、DE ROSAなど。一番の売れ線は、GIANT。種類も価格帯も広いから。ただ、タイ全体では、イタリアブランドが人気だね。客層は色々で、観光地で使いたいという人から通勤目的もいる。日本人のお客さんも結構来るよ。
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