2024年4月20日(土)

WEDGE REPORT

2015年11月5日

 1件は2002年の中華航空ボーイング747で、台湾から香港に向かっている途中に高度約1万メートルで空中分解した。この機は22年前に「尻もち事故」の修理を受けていた。もう1件は1985年に御巣鷹山に墜落した日航ジャンボ機の事故。同機も7年前に「尻もち事故」を起こしている。

貨物室で爆発の可能性も

 テロ説も取り沙汰されている。墜落後間もなく、ISのエジプト支部「シナイ州」が犯行声明を出し「シリアでのロシアの空爆による同胞殺りくへの報復」と強調した。本家ISのラジオ局「アルバヤン」はその後、この「シナイ州」の声明をそのまま読み上げ、犯行を追認した。

 仮にテロだとすると、どうやって同機を爆破したのか。同機が空中でバラバラになったのは巡航高度約9000メートルに達した時で、地上から撃墜するにはウクライナ上空でマレーシア航空機が被弾したように高性能の地対空ミサイルが必要。しかし「シナイ州」は、仮に保有していたとしても携行型の地対空ミサイルといわれ、これだと射程距離は6000メートルが限界。このためこの線はほぼ消えた。

 残るのは、手荷物や下着などに隠して爆発物を機内に持ち込むか、ないしは航空機に預けた荷物の中に爆発物を仕掛ける手口だ。テロの専門家らによると、シャルム・エルシェイクはエジプト観光産業のドル箱的存在で、町の内外はテロの取り締まりが非常に厳しいが、外国の航空会社の発着が多い航空機への搭乗手続きはさほど厳しいものではなかった、という。

 1988年のスコットランド・ロッカビー上空で起きたパンナム機の爆破はリビアのテロリストが荷物に忍ばせた爆弾を貨物室で爆発させたテロ事件で、270人が犠牲になった。今回も同様のことが起きた可能性は排除できない。
無論、ISが多用する自爆テロの可能性も否定できない。ISに「7000人ものロシア人が加わっている」(プーチン大統領)は大げさにしても、チェチェン系の過激派がロシア人観光客に混じって搭乗するのは容易なことだったろう。

 エジプトのシシ大統領はISの犯行声明を「プロパガンダ」として観光産業への悪影響を食い止めるのに必死だが、英政府は4日、当面の間、英国の航空機の同地への運航を停止すると発表、テロの可能性が強まったとの観測を呼んでいる。

  
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