2024年12月22日(日)

報道にはすべて裏がある

2015年12月15日

 この選挙に官邸は異常に肩入れしている。まず、今月4日に突如、官邸で行われた日米の共同記者発表。米国のケネディ大使とともに菅義偉官房長官が、沖縄県内の米軍施設・区域の返還の一部前倒しを明らかにしたのだ。そのなかには、普天間飛行場の一部約4ヘクタールが含まれていた。政府と近い佐喜眞市長がかねてから求めていた普天間基地の早期返還に、一部とは言え応えることで、実績づくりに協力し、市長選挙を後押ししようという官邸の意図がみえみえだ。

 翌日の朝刊で、沖縄の地元紙は、「今回返還される普天間飛行場の4ヘクタールは飛行場全体の0.8%に過ぎない」(沖縄タイムス)と指摘し、日米両政府の発表を「話クワッチー(話のごちそう)」に過ぎないとの翁長知事の受け止めを引用。会見にわざわざ在日米軍司令官のドーラン空軍中将を同席させたのも「何とも仰々しいお膳立てだ。成果をアピールしたい気持ちがありあり」と批判した。

ディズニー側と話をつけたという噂も

 それでも官邸は次の手を打った。12月8日に官邸で官房長官と面談した佐喜眞市長は、普天間基地の跡地利用の一環としてディズニーリゾートの誘致を目指す考えを示し、政府の協力を求める要望書を提出した。官邸関係者によると、この佐喜眞市長の要望は菅官房長官によるお膳立てだという。

 「官房長官はすでにディズニー側と話をつけているようです。基地が早期に返還されると跡地がどう利用されるのか、具体的な青写真を見せることで、政府と協調して早期返還を目指す佐喜眞市政の継続を市民に訴えようということなのです」

 そして、官邸による宜野湾市長選へのテコ入れのさらなる一手が、冒頭に挙げた軽減税率で公明案の丸のみだ。佐喜眞氏が市長に初当選した前回の選挙では、元市長だった革新系の相手候補とのあいだで大接戦となり、票差はわずかに900票だった。

 通常、首長選挙では2期目の選挙が最も有利と言われる。1期4年間のあいだに市民のあいだに知名度が浸透する一方で、多選批判を受けることもないからだ。

 だが、もともと接戦だった上に、今回の選挙では志村氏を支援するのはオール沖縄。革新票だけでなく一部保守票の取り込みも狙う。県土木建築部の元幹部職員という肩書も保守票が期待できる。現在のところ、自民党が独自に行った電話調査では、わずかに現職が有利となっているようだが、今回も大接戦となるのは必至だ。それだけにカギを握るのは公明票の行方となる。

 宜野湾市内の公明票はおよそ5000。公明党は宜野湾市長選挙でどちらの候補を支援するのか、まだ態度を明らかにしていない。佐喜眞陣営とすれば、なんとしても支援を取りつけたいところだろう。参議院選挙だけでなく、この選挙でも公明票頼みとなっている構図だ。

 この選挙が官邸にとって負けるわけにいかないのは、普天間基地のお膝元でもある宜野湾市で辺野古移設に反対する市長が誕生すれば、今後の移設計画の先行きが見通せなくなるからだ。一自治体の首長選挙ながら国政を左右しかねないだけに目が離せない。


  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。


新着記事

»もっと見る