安倍政権が重点法案と位置づけてきた安保法案が来週にも参議院本会議で採決にかけられる見通しだ。野党側は激しく反対しているものの、与党多数の状況で可決は動かないものとみられている。
その安保法案をめぐって、先月30日に東京・永田町の国会議事堂前で労働組合や市民団体が主催した法案反対の大規模集会が開かれた。主催者発表では、参加者の数は12万人。朝日新聞や東京新聞などの法案に反対するメディアは、この数字を大々的に取り上げ、翌日31日の朝日新聞朝刊1面には「安保法案反対、最大デモ」、「国会周辺に集結」の見出しが躍った。
だが、この主催者発表の数字とは別に、警備を行った警視庁の集計したところでは、その数は3万3000人。4倍近くもの開きがある。警視庁の集計は、空撮の写真や、現場で警備にあたる警察官がカウントしたものを足し上げた数字。一方の主催者側の数字の根拠は不明だ。
集会当日は、筆者も取材で現場にいたが、狭い歩道に大勢が詰めかけて押し合ううちに、一部が警察官の制止を振り切って柵を乗り越えて車道にあふれ出し、参加者二名が機動隊員を暴行したとして公務執行妨害で逮捕されるという騒然とした雰囲気となるなど、確かに集会のメイン会場となった国会議事堂正門前の歩道や車道には相当な数の参加者が集まっていたのは事実。だが、車道は長さ約150メートル、幅約50メートルしかない。
この他にも、国会の北庭と南庭、さらに霞が関や日比谷公園周辺も会場となっており、記者はそちらもくまなく見て回ったが、参加者の密集度は国会正門前と比べ明らかに低い。そもそも、12万人という数字は、60年安保闘争のときのピークの時のデモ参加者とほぼ同じ(この時は13万人)。率直に言って、それほどの人数がいたとの印象はない。
産経新聞は今月1日の朝刊で、この集会の参加人数について独自に試算したとして、<試算は上空から撮影した正門前で警備にあたっていた警察車両の前に機動隊員が15人並んでいたことを基準とした。そこに面した正方形部分の人数を約225人と計算。白枠の正方形はその16倍で約3600人とした。9つの白枠全てが参加者で埋まっても国会前は約3万2400人となった>としている。
とかくこうした集会の数字は主催者側が実数より多く発表するものだが、こうまで違うとは。デモや集会に参加するまでに積極的に安保法案に反対する市民がどれだけいるのか、という目安になるからだ。実際に12万人もの市民が雨の降る悪天候のなか集会に参加したとあれば、法案成立を目指す政権にとって大きな圧力となるだろう。