2024年11月22日(金)

報道にはすべて裏がある

2015年9月9日

 前回、筆者は沖縄のメディアの問題をこのサイトで書いたが、こうした集会参加者数の大幅な水増しは、沖縄において特に甚だしい。いくつか例を挙げてみよう。

 今年5月、那覇市の沖縄セルラースタジアム那覇で開かれた「戦後70年止めよう辺野古新基地建設!沖縄県民大会」なる集会。主催したのは、昨年の県知事選で翁長氏の当選を支援した革新系各団体や経済界の一部で、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する意思を表示するために開かれた。

 この時の参加人数は、主催者発表では3万5000人。琉球新報と沖縄タイムスの両地元紙もこの数字を掲載し、「県民の総意が示された」とこの大会の成果を喧伝した。
ところが、沖縄県警関係者によると、実態はこうだという。

 「そもそも県民大会の会場となった那覇市内のスタジアムは、消防法上、内野席と外野席あわせて1万8千人しか収容できず、内野グラウンドにブルーシートを敷いて折り畳み椅子を設置しましたが、それも1000脚分だけです。多少、人の出入りがあったとしても、主催者発表よりも1万人は少なかったはずです。実際、県警は2万5000人とカウントしています」

 主催者発表と警察の集計のあいだの差が4倍も離れてはいないが、それでも1万人も違う。

「いいじゃないか、そのあたりは暗黙の了解ということで」

 2010年に沖縄本島中部の読谷村の運動公園で開かれた「普天間基地県内移設反対の県民大会」では、主催者は参加人数を9万人と発表した。この時に県警が集計した数字は2万8000人。地元紙の関係者によると、大会を取材した記者が、大会事務局の幹部に「主催者発表の9万人はいくらなんでもサバ読みすぎじゃないですか」と尋ねたところ、「たしかに3万人もいないな。いいじゃないか、そのあたりは暗黙の了解ということで」と答えたというから、主催者側は県警の集計とほぼ同じ人数だと把握していながら、ウソの数字を発表していたということになる。

 取材するマスコミ側にすれば、どちらにしても正確な数字は把握しようがないから、主催者側が出す数字を採らざるを得ないとの理屈なのだろうか。しかも、「主催者発表では」と但し書きを入れることで、誇大な数字をそのまま報じることへの免罪符としているかのようだ。

 だが、現地で取材にあたっている記者であれば、明らかにその数字に誤りがあることは気づくはずだ。その気になれば、産経新聞がやったように独自に推計をすることだってできる。

 数字を出す主催者側にすれば、参加者数をなるべく多く見せかけて、集会が成功したと見せかけたり、あるいは主催者の影響力の大きさを誇示しようとしたりする意図があるのは言うまでもないだろう。だとすれば、いくら主催者がそう発表しているからと言って、そのままその数字を記事にすることに疑問を持つべきだ。

  
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