山頭火の句碑は大分県に39基ある、という。放浪の山頭火を支えたのは、井泉水が主宰する俳誌「層雲」の俳友たちであった。山頭火は日記のなかで「無能無才、小心にして放縦(ほうしょう)、怠慢にして正直。あらゆる矛盾を蔵しているけれど、こうなる外なかったであろう。意志の弱さ、貧の強さ、ああこれが私の致命傷だ!」と書いている。しかし、この弱音はしたたかな二枚腰であって、酒や金をたかった山頭火の口ぐせは「すまんすまん、またつぎの世で払わせてもらうよ」であった。他人にものをおごる人の心理を見抜いていた。
没後は、熱心なファンや研究家がいて、山頭火は幸せ者だ。この日は夜遅くまで、園部氏と山頭火について語りあった。
<第3回に続く>
*次回は10月24日(土)を予定しています。
著者:嵐山光三郎(あらしやま・こうざぶろう)
1942年静岡県生まれ。作家、エッセイスト。雑誌編集者を経て、執筆活動に入る。88年『素人包丁記』により講談社エッセイ賞を、2000年『芭蕉の誘惑』(後に『芭蕉紀行』と改題。新潮社)によりJTB紀行文学大賞をを受賞。06年、『悪党芭蕉』(新潮社)により泉鏡花文学賞と読売文学賞受賞。近著『旅するノラ猫』(筑摩書房)、『下り坂繁昌記』(新講社)など著書多数。旅と温泉を愛し、1年のうち8ヵ月は国内外を旅行する。カメラマン:船尾修(ふなお・おさむ)
1960年兵庫県神戸市生まれ。筑波大学生物学類卒業。出版社勤務を経て、さまざまなアルバイトをしながら世界を放浪。そのときに写真と出会う。アジア・ アフリカを主なフィールドに、【地球と人間の関係性】をテーマに撮影を続けている。2000年から【日本人の心の原郷】を映像化するために大分県の国東半 島に移住。主な著作に、『アフリカ 豊饒と混沌の大陸(全2巻)』、『UJAMAA』(共に山と渓谷社刊)などがある。大分県立芸術文化短期大学非常勤講師。第9回さがみはら写真新人賞受賞。オフィシャルサイト→http://www.funaoosamu.com/
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