2021年までにCO2排出量を40%以上削減せよ!
欧州でのCO2排出量規制が厳しくなる。2013年11月にEU欧州会議で決まった「2021年までに新車の二酸化炭素排出量を1キロあたり95グラム以下にする」という2021年規制が5年後に迫っているのだ。2006年の実績値が160グラム/キロだったので、ここから40%以上の削減が必要になる。2015年までの目標、会社別平均130グラム/キロは達成できたものの95グラム以下はかなり実現が厳しいと判断した世界各国の自動車メーカーはガソリン車よりも二酸化炭素排出量の少ない、クリーンディーゼルに着目したのだ。
例えば2015年モデルのメルセデス・ベンツ「SLK250d」は2.2リットル直4ディーゼルでCO2排出量114-123グラム/キロなのに対して、2リットル直4ガソリンエンジンの「SLK200」のCO2排出量は142-154グラム/キロとなる。ちなみにマツダのSKYACTIV-D 2.2リットルディーゼルを搭載した「CX-5」のCO2排出量は119グラム/キロである。
逆転の発想で勝負するマツダ
CO2に関しては有利なディーゼルエンジンだが弱点もある。NOx(窒素酸化物)とPM(粒子状物質)に関してはガソリンエンジンよりも多く排出されるのだ。欧州でこれらの排出規制値を決めるのが欧州排出ガス規制(EURO規制)である。1993年に「EURO1」が制定されて以来、その基準値は加速度的に厳しくなり、2015年の「EURO6」では1キロあたりのNOx排出量が80ミリグラム、PMは0.5ミリグラムと定められている。この基準をクリアーするためには排気ガスの後処理装置の設置が不可欠となり、ディーゼル車の高価格化につながる。同じクラスのガソリン車に対してもともと高価だったディーゼル車が、さらに割高になってしまうのだ。
ところが、マツダのディーゼルエンジンだけは、世界で唯一、後処理装置不要で「EURO6」の基準を満たしている。これを実現したのがSKYACTIV-Dである。その技術の詳細をマツダ・パワートレイン技術開発部長・寺沢保幸氏に聞いた。
ディーゼルエンジンは、
1.ターボ
2.超高圧のインジェクション
3.後処理装置
によって大きく進化を遂げたという。しかし、それによってエンジン自体の価格も上昇するという副作用を生んだ。走らない、うるさい、排気ガスが汚いというディーゼルエンジンが、この3つの技術によって生まれ変わったのだ。ターボとの組み合わせで低回転から力強いトルクを発生、熱効率がいいため燃費がよく経済性に優れる、そしてクリーンな排気を実現したのが、クリーンディーゼルと呼ばれる新生ディーゼルエンジンである。
ところがマツダの発想は全く逆で、低圧縮で高回転型のディーゼルエンジンの開発に着手したのだ。通常のクリーンディーゼルの圧縮比が16前後なのに対してマツダは14を実現している。なぜマツダは低圧縮にこだわるのか。燃料が完全燃焼するためには空気と燃料が十分に混ざる必要がある。しかし、高圧縮比のエンジンではよく混ざる前に自然発火してしまい、局部的な異常燃焼が発生、これが原因でNOxやススが大量に発生する。これを低圧縮比にしてやると燃料と空気が完全に混ざってから燃焼し、さらに燃焼温度も下がるためクリーンな燃焼を実現できるのだ。つまりマツダは低圧縮なエンジンを作りたかった訳ではなく、理想的な燃料と酸素の混合を追求した結果、低圧縮に到達したのである。