CESはConsumer Electric Showだが、「そろそろ名前をConnected Electric Showに変えるべきかも知れない」というジョークが飛び出すほど、テーマは一気にIoTに移行しつつある。インターネットを使うデバイス、というと一昔前はパソコンだったが、現在は携帯電話だけではなく家電、車、腕時計と、まさに通信を取り巻く環境は大きく変化している。
個人に特化した顧客市場
マーケティングコンサルティング会社、IDCがこうした時代の状況から「非常に個人に特化した顧客市場でいかに成功を納めるか」というシンポジウムを開催した。
コンシューマーIoTは少し前まではまだ夢の話だったが、今やすでに現実になりつつある。その中で大事なのは「いかに個人のインフォメーションを受け取り、コンシューマーのイマジネーションを掻き立てるサービスを提供できるか」にある、とIDCは考える。
IoTへの移行に大きな役割を果たしたのは、何と言ってもiPhoneの登場だ。それまでボタンのない携帯電話というものを誰も想像せず、その便利さに誰も気づかなかった。それと同様に今後企業が考えるべきは「顧客にとって何が問題か」「どこに需要があるか」を掘り出して行くことになる。
IoTは大きく分けて7つの分野がそれぞれ連携し、人を介在せずに相互コミュニケーションを取り、人にとって居心地の良い環境を創りだすことにある。7つの分野とは自動車、家、ユーティリティ、機械、個人の健康情報、便利さと快適さ、エンターテイメントだ。これを実現するにはクラウドコンピューティング、ビッグデータは必要不可欠のものとなる。
IDCでは2020年までに300億個以上のIoT 製品が登場する、と予測している。しかしそれには障壁もある。まず、個人情報の漏洩防止という問題だ。今回のCESでもスマートウォッチをはじめ、様々なウエアラブルデバイスが登場している。しかしグーグルがグーグルグラスを試験的に販売した時、市場はヒステリックとも言える拒否反応を示した。瞬きなどの動作だけで写真が撮影できる、という機能が「知らない間に写真を撮られるなど、プライバシーの侵害に当たる」と考えた人は多い。
IoTの時代になれば現在よりも多くの個人情報がネット上に保管されることになる。それをいかにして保護し、個々人が安心してデバイスにログインできる状況を創りだすのか、というのが第一の関門となる。
次に、サービスにいかに特異性を持たせ価値を生み出すか、という問題だ。パソコンを例に上げると、数十年前のパソコンはまさに高級品だった。しかし現在では数万円で購入できる。コモディティ化したために価値が下がった商品の典型と言える。消費者にとってはありがたいが、企業にとっては商品の価値が下がり一般化するのは薄利多売につながり旨味が少ない。いかにしてこれを回避し、ある程度の価格を保てるか、というのも今後の商品開発の中で課題となるだろう。
また、IoT時代の到来の中で、例えばスマートホームという考え方について、家の電気配線とインターネットをつなげてボイスコマンドですべての機器をコントロールする、というような場合、その設置をプロバイダーが行うのか、業者か、あるいは利用者がDIYで行えるのかの選択がある。例えばブロードバンドサービスプロバイダー、ホームセキュリティ、デバイスプラットホームなど、スマートホーム一つとっても関係する業界は多い。これらを集約するのは誰の仕事になるのか、という点だ。