日米独なども資源国ほどではないが影響を受ける。中国は人民元安にして輸出を伸ばし輸入を減らすだろう、という人もいるが、これは世界経済に悪影響を与える。8月以来、人民元は5%減価した。多くの人や会社が海外投資のためにドルを買ったからである。
中国の指導者は、私的投資と競争を奨励し、政策を近代化すべきである。中国は過去30年間、劇的に変わった。経済への指令と統制アプローチは、今後、成果を上げないであろう。
出典:‘China’s Obsolete Economic Strategy’(New York Times, January 8, 2016)
http://www.nytimes.com/2016/01/09/opinion/chinas-obsolete-economic-strategy.html
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市場の反応考えぬ中国当局
この社説は、中国の経済政策についての懸念を表明したもので、有益な指摘です。
今年は年初以来、世界同時株安になっています。その主たる原因は中国経済の減速への懸念です。中国経済の動向が世界経済に与える影響の大きさが実感されます。
しかるに、中国の経済運営は市場経済というより共産党による指令統制経済である面が強く、かつ共産党、政府が大きなミスをすることが年初以来ますます明らかになってきました。株が下がりすぎれば、サーキット・ブレイカーで市場を閉鎖して、株安を止めようとしましたが、市場閉鎖前に売り抜けようとする人が出て、事態を悪化させました。それで、このサーキット・ブレイカーをやめてしまいました。次に、国有企業や証券会社などに株の売りを一定範囲にとどめ、株買いをするように指示、株安を止めようとしましたが、どこまで下がるかわからないのですから、この状況で株を買う人はなかなか出てきません。
中国当局は、市場がどう反応するかをよく考えずに、試行錯誤をしています。それが世界経済を混乱させています。中国には、中国のやり方が世界経済に大きな影響を与えることを自覚してもらって、指令よりも市場が発するシグナル重視の対応に代えてもらうことが重要でしょう。また、金融システムが大きな問題を抱えています。これをできるだけ解消しておかないと中国発の金融危機、世界経済不調を引き起こしかねません。
中国は、株についての対応と同じようなミスを、元レートについてもしかねません。元安期待はドル購買につながり、さらなる元安になります。その結果、資本流出が生じてしまいます。
市場との対話にどの国の当局も苦労しています。中国は今後も種々な失敗をしながら学んでいくのだろうと思われますが、政治体制の問題もあり、うまく学んでいくことができるのか、はっきりしません。日本としては、こういう中国の失敗と混乱に振り回されるリスクを認識し、考えておく必要があります。
中国は、世界経済にとって“too big to fail”になってしまったと言えるでしょう。
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