そこで重要になるのが自国の原油を必ず輸入してくれる製油所の存在である。仮に自国と外国企業との合弁製油所が世界の各地域にあれば、自国原油の輸出はそれだけ容易になる。
2016年初には制裁解除となると見たイランは、既に昨秋から欧州ほかでの合弁製油所の建設の可能性を探っていた。最近もスペイン企業とジブラルタル海峡沿いに製油所を建設する事業を進めようとしている。
サウジ産石油の売り先を確保
話をサウジアラムコのIPOに戻せば、この件に精通した消息筋は、
①サウジは外国企業との精製事業の株式の売却は考えているが、サウジアラムコの原油探査・生産部門の株式売却は考えていない
②幹部職員は同社が国内外の合弁下流企業の株式の上場を検討していることを伝えられた
③一つの選択肢はサウジアラムコが下流企業に所有する株式を束ねる持ち株会社を設立したうえでの上場である、と解説している。
サウジアラムコは国内にロイヤル・ダッチ・シェルとの合弁製油所SASREF(ジュベイル)、エクソンモービルとの合弁製油所SAMREF(ヤンブー)やシノペックとの合弁製油所YASREFを持つほか、海外でもエクソンモービル、シノペックと中国で、シェルと米国で合弁製油所を持っている。
下流持株会社の上場を待って世界各地にさらに合弁製油所を持ち、サウジ原油の販売を確かなものとする。したたかなサウジ戦略が透けて見える。
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