2024年12月26日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年1月29日

 12月28日のイラク軍によるラマディ奪還につき、米主要各紙はこれを歓迎しその意義を説く社説を掲載しています。そのうち、同日付けウォールストリート・ジャーナル紙の社説を紹介します。

ISからのラマディ奪還を喜ぶイラクの人々(Getty Images)

ラマディでの勝利がIS一掃のモデルとなり得る

 イラク軍によるラマディ奪還はそれ自体良いニュースだが、穏健なスンニ派勢力が復活する兆候であれば、一層良いことである。

 ラマディでの勝利は、イラク軍、主としてそのスンニ派部隊が、米国の訓練と武器の支援を受けた地元スンニ派部族の助けを得て達成された。この方式は、イラク西部およびシリアからのISIS一掃のモデルとなり得る。米国は最近、戦闘地域に特殊部隊を増派、武器供給(肩に担いで撃つ対戦車砲はISISのトラック爆弾を阻止した)を増やした。米国による空爆はISISの動きを制限した。ラマディ奪還は、ISISのバグダッドへの脅威を除去した。

 この成功は、2016年のモスル奪還作戦に向け、イラク人の士気を高めるだろう。モスル奪還はより困難であろうが、ラマディでの戦術が適用できる。モスル奪還は、ISISをカリフ国の中心から押し戻し得ることを示すのに、決定的に重要である。

 イラクにとっての今の課題は、ラマディを保持できることを示し、2007年の米軍増派の時のように、穏健なスンニ派の忠誠心を取り戻すことである。これはシーア派民兵の排除、地元のスンニ派を統治に参画させることを意味する。アバディ首相は、ラマディ奪還作戦からシーア派民兵を排除したが、このことを理解しているようだ。

 他方、ISISがシリアに聖域を保持する限り、イラクには脅威であり続ける。ラマディ奪還作戦が示す通り、空爆だけではISISを領域から追い出せない。これは、シリアでも地上軍が必要であることを意味する。長い間オバマ政権は、ISISではないスンニ派シリア人に訓練と武器を与えること、米空軍力による安全地帯設定に失敗してきた。

 12月初めに、サウジ、エジプト、トルコ、パキスタンなどがISISと戦う地元勢力に武器、さらには地上軍派遣による支援を提供するスンニ派同盟を発表した。これらの国々が実際に対ISIS戦を遂行すれば、非常に良い。例えば、トルコはこれまでISISではなくシリアのクルド人を攻撃するのにほとんどの時間を費やしてきた。米はこれらの国々がスンニ地域奪取を助けることを求めるべきである。

 ISISのバグダディ指導者が、イラク軍がラマディを包囲した後、ISIS軍を激励する珍しい公式メッセージを発した。ラマディでの敗北を予期したということかもしれない。サウジ主導の同盟、西側、ロシア、ユダヤ人、背教者などあらゆる者への批判も述べた。

 バグダディは、ISISの成功は、ジハーディストの勝利が不可避であるとのオーラにかかっていることを知っている。ラマディ奪還はそうしたイスラミストの幻想を打ち砕く第一歩である、と指摘しています。

出典:‘The Retaking of Ramadi’(Wall Street Journal, December 28, 2015)
http://www.wsj.com/articles/the-retaking-of-ramadi-1451346251

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