2022年8月17日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年1月29日

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ファルージャとモスルの奪還が次なる課題

 昨年末のラマディ奪還はイラク政府軍にとり大きな勝利です。ISISの支配領域は空爆で縮小傾向にありますが、多くの人が居住する都市からISISが追い出された意義は大きいです。社説は、これが米国などの空爆支援を受けつつも、イラク軍とスンニ派部族勢力の協力で成し遂げられたことの意義を強調していますが、その通りです。イランの影響下のシーア派民兵は米国の意向もあり、解放戦には参加しませんでした。

 次の課題はラマディを保持し続けることとファルージャとモスルの奪還です。同じ日のニューヨークタイムズ紙の社説は、ラマディ奪還の特別な重要性を「ラマディはスンニ派の拠点、アンバール県の県都で、ファルージャへの補給線を遮断する手段をイラク政府に与える」と指摘しています。ファルージャの「イスラム国軍」は補給に苦労していると言いますから、ファルージャの制圧は比較的に容易でしょう。モスルの奪還はより困難でしょうが、アバディ首相は2016年中には達成したいとしています。モスルは200万くらいの人口のある都市です。これを奪還すれば、「イスラム国」のイラクにおける「カリフ国家」はなくなってしまうと言ってよいと思われます。

 今回のラマディ奪還は快挙であり、士気の面でISISへの大きな打撃です。モスルでみじめに敗北し、ラマディでもパニックに陥ったイラク軍がここまで立ち直ったことは賞賛に値します。

 支配領域が狭まれば、税金徴収も石油収入もなくなります。支配領域を狭めることがISISを敗北させる正道でしょう。

 「イスラム国」の首都はラッカです。これを制圧してしまえば、「カリフ国建設」プロジェクトは結局うまくいかなかったということになり、アル・バグダディとISISの求心力は急激に下がるでしょう。欧米の情報機関はISISがいまリビアに拡散する傾向があると懸念していますが、それはシリア、イラクでのカリフ国がうまくいかなかったことを示すことにもなるでしょう。

 なお、オランド仏大統領は、フランスは戦争状態にあるなどと言いながら、地上軍は出さないと言っています。地上軍を出さない戦争などというものがあるのか、レトリックと行動にギャップがあると言わざるを得ません。

  
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