『The Internet of Things Report』は、企業は収益性を改善するために次の3つの分野でIoTを利用することができるとしている。
(1) オペーレションコストの削減
(2) 生産性の向上
(3) 新しい市場への進出や新製品の開発
新しいアイデアやテクノロジーが生まれた時、メディアの過剰な煽りなどによって市場の期待が急激に高まることがある。それをハイプという。しかし、その新しいアイデアやテクノロジーの未成熟さから、なかなか実際の製品やサービスとして実現されないと、その期待が一気に幻滅に変わる。そして、その中から成熟したものが生き残り、実際の製品やサービスとして市場に提供されていく。産業分野における「オペーレションコストの削減」や「生産性の向上」のためのIoT/M2Mは、すでにハイプではなくなっている。
インターネットに繋がった自動車、いわゆるコネクテッド・カーへの市場の期待も非常に大きい。The Internet of Things Reportは、 2020年には2億2千万台以上の自動車がインターネットに繋がるだろうと予測している。自動車は一般消費者向けの製品として価格も高く、センサーや通信モジュールなどのコストやスペースや電力などの問題がそれほど大きくない。
米テスラ・モーターズ社の電気自動車はスマートフォンのアプリを使って、離れた場所から航続可能な距離や充電状況を確認したり、充電完了の通知を受け取ったり、遠隔操作でルーフの開閉や空調のコントロールをしたり、駐車した場所をGPSによって確認したりすることなどができる。さらにパソコンやスマートフォンのように、インターネット経由でソフトウェアが更新されて新しい機能が追加されていく。
自動運転に必要な常時接続
自動車については自動運転が大きな話題になっているが、実はインターネットに常時接続されていることが自動運転の必須条件にはなっていない。現在のモバイル通信のインフラの信頼性では、インターネット接続に頼った自動運転は現実的ではないからだ。まだ、繋がっている時にダウンロードした情報を自動運転に利用するというレベルだ。しかし自動運転の目指す未来にはコネクテッド・カーがあることは間違いないだろう。
自動車以外の一般消費者向けの製品をつくる製造業での「新しい市場への進出や新製品の開発」のためのIoTは、未だにハイプの域を脱してない。インターネットに繋がった冷蔵庫は、一般の人にインターネットが利用され始めた頃からのハイプだ。電子レンジにレシピをダウンロードしたり、帰宅途中に自宅のリビングのエアコンのスイッチを入れたり、洗濯機の故障を事前に予告してくれたりするといったIoTだ。ドアの鍵をスマートフォンからコントロールできるというIoTは、ホテルや宿泊施設の共有サービスでの採用を期待してベンチャーを含めた多くの企業が群がっている(図4)。