2024年12月6日(金)

Wedge REPORT

2016年4月22日

状況の変化に対応していくこと

 サンフレッチェ広島が初優勝を飾ったのは、2012年。佐藤寿人選手は、このシーズン、得点王、MVP、ベストイレブン、そしてフェアプレー賞と史上初の四冠を飾り、チームの大黒柱として活躍した。サンフレッチェは、2013年も最終節で逆転優勝を飾り、劇的なV2を果たした。この2シーズン、佐藤選手のリーグ出場時間は、一試合平均85分。それが、2015年には平均64分となった。伏線は2014年シーズンにあった。

 途中交代が続いた2014年シーズンは、佐藤選手にとってストレスの大きなものになった。「90分出ていることが当たり前だったし、90分の中でいかにチャンスを作って、得点を奪うかを考えてプレーしていました。ただ、途中交代が続くというのは、状況の変化だと思いますし、その変化にきちんと対応していかないといけないな、と思っていました。それでも、監督と話していく中で、消化し切れていなくって。そんな時、一度スタメンを外れて、若い選手とトレーニングする機会が増えたんです。彼らは、試合に出られることもほとんどなくて、それでもみんな戦っているんだな、と感じることができました」

練習中はチームメートへのリクエストやアドバイスなど、コミュニケーションが欠かせない。チームを引っ張ってきたエースが積極的に交わす言葉は、チーム全体にいい影響を及ぼしている

 登録選手が30名いる中で、ベンチ入りが18名。試合に出られるのは、先発の11名に加え、交代で最大3名である。「個人の思いは、正直必要ないな、と思いました。チームが勝つために、30人いる中で、一人ひとりの役割があります。もちろんみんながスタメンで出たいというのはありますけど、途中から出場する選手もいますし、ベンチ外の選手も含めて、チームとしていいトレーニングがしていけるか、チームとして結果を出していけるか、なんですよね。完全に個人の思いだけだったな、と思いましたね。それに、ずっと同じことはどんな世界にもないですし、チームの状況の変化に対応していかないといけないな、と改めて思いました」。メンバー外の2試合、控えで出場のなかった2試合、控えで途中交代出場した3試合を経て、佐藤選手は再び先発メンバーに名を連ねるようになった。

 昨シーズンは平均64分の出場となった佐藤選手。その限られた時間の中で、FWとしては、12年連続となる2桁得点を記録。また、前線から、そして自陣に戻ってのディフェンスもこなし、73得点30失点というチームのシーズン最多得点と最少失点の両方に貢献した。チームの状況や役割は、変化し続けている。

 「サッカーだってトレンドが変わっていく。それに柔軟に対応していけるクラブや選手は強いと思います。もちろん、自分がやってきたもの、財産は大事ですが、それがそのまま正解だとは限らない。色んな変化に気づかないといけないし、耳を傾けることと、しっかり見ていくこと。そこはしっかりやらないといけないなと思っています。そのきっかけが2014年の夏でした。今までとは違う、新しい考え方を持てるようになりましたし、それでその時期に感じていたストレスは感じなくなりました」


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