サンフレッチェ、黄金時代へ
今年のサンフレッチェ広島のスローガンは、『WE FIGHT TOGETHER 2016 挑戦』である。佐藤選手の話からも、優勝したけれど、目指すべき高みに到達している感じはなく、まだまだチームとして成長ができるという意識が感じられる。
「タイトルに無縁だったチームが、この4年で3回のリーグ優勝。2014年もタイトルこそ逃しましたが、ヤマザキナビスコカップで準優勝。常にタイトルを意識できるチームになったと感じていますが、ここからが大事だと思います。ジュビロの黄金時代には及ばないし、圧倒的な強さもない。ギリギリを勝ち取ってきた感じですね。でも、だからこそ勝ち抜いてきた実感がありますし、意味のあるタイトルだと思うんですが、ホントに強いなと見せつけたことはない。だから今もチャレンジャーなんです。若手選手も優勝争いを糧にして成長し、チームとしてもっともっと成長したい。今だけ良くてもダメですし、『ずっと強いよね』と思ってもらえるチームになりたい。継続して結果を出す、そういうクラブになりたいと思っています」
チームとしても、この数年確実にステップアップをしていると感じるが、それは挑戦者として目の前の課題に向き合ってきた結果だという。「5年後10年後のプランを立てることは必要ですが、なかなか想像がつかないし、自分だけではどうしようもないことが起きます。僕が大事にしているのは、目の前のこと、今何ができるかを積み重ねていくことです。将来こうなりたいという以上に、『今どうするか』、それに、『今よりもどうしたいか』を考えてきました。だから、目の前の試合にこだわって勝ちたいし、その積み重ねが優勝に繋がっていくのだと思っています」と常に今ある課題に向き合ってきた佐藤選手とサンフレッチェ広島。それには、クラブ規模も影響しているという。
「クラブ規模を考えてもそうだし、サンフレッチェは地方クラブです。僕らはビッグクラブになろうとは思っていない。自分たちの立ち位置というか、自分たちのことは自分たちが一番よく分かるんですよね。背伸びし過ぎてもいいことはないと思います。今の自分たちに何ができるのか。その先にタイトルがある。今できることをしていかないと、結果は出てこない。2012年に初優勝を飾りましたが、ビッグクラブに多くある優勝メンバーが残って、さらに補強して上積みしたチームを作っていくことはできませんでした。それでも、その中でなんとか結果を出してきたのは、チームとして今できることを積み重ねた結果だと思います」。実際、サンフレッチェ広島は、コンビネーションが重要となるプレースタイルで、中心選手が移籍することによるダメージは大きいが、常に新戦力や若手選手が対応し、ぶれることなくチーム力を発揮してきた。
今シーズンはAFCチャンピオンズリーグ(ACL)もあり、リーグ戦との過密日程に加え、海外への移動など心身ともにタフな戦いとなる。2007年の浦和レッズ、2008年のガンバ大阪という日本勢の連覇以降、ACLでは決勝戦に残るクラブチームもない状況が続いている。ただ、見過ごされがちだが、日本勢の戦いを難しくしているのは、ACLの公式球がリーグ戦と異なるという事実である。ボールが変わることで、回転のかかり方も、ボールフィーリングも変わってくる。それにどれだけ合わせることができるのか、がアジアを戦い抜く上で重要なことになる。
「今シーズンは、非常にタフなシーズンになっていくとは思いますし、リーグとACLを並行して戦っていく難しさがあります。2014年シーズンは、ACLで決勝トーナメントに進めましたが、ラウンド16で敗れました。リーグは8位で優勝争いも加われず、どっちつかずでした。去年のガンバは、ACLがベスト4。リーグ戦もナビスコ杯も優勝争いをして、天皇杯を獲りました。去年のガンバみたいなチームが本当に強いチームだと思います。昨シーズン、僕らはリーグに集中できました。去年ガンバが経験したものを今僕らが経験して、難しさを感じていますが、それができるチームだと思います。優勝をするクラブや優勝を目指すクラブは、質の高い競争がまずあります。誰が出ても高いクオリティがないと戦っていけない。昨シーズンもそうでしたが、今シーズンはさらにチーム内の競争が激しくなっていて、だからこそ、チームの総合力で今シーズンを戦っていきたいと思っています」