これらが、2016年の選挙の真の争点である。選挙戦は、第二次大戦後の米外交政策の根本的な柱が議論の対象となり、これまでとは異なったものになりそうである。ヒラリー・クリントンに課せられた運命は明らかである。それは、なぜ開放的で自由主義的な国際秩序が一般のアメリカ人の利益になるかを説明し、グローバル経済の閉鎖、同盟の終焉、権威主義的時代の夜明けがいかに米国の国益に脅威かを説明することである。
国際社会は、テロ攻撃、ロシアの攻撃性、中国の修正主義など、多くのことに対し生き残ることができるかもしれないが、米国のリーダーシップの崩壊は、遥かに酷い災厄であろう。
出典:Thomas Wright,‘Donald Trump wants America to withdraw from the world’(Financial Times, March 23, 2016)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/25d0210a-ef80-11e5-9f20-c3a047354386.html#axzz43kdfr23
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米国にダメージ与える“トランプ外交”
トランプが大統領になって持論の通りの外交政策を実施すれば世界にとって大打撃を与えるというのは、論説の言う通りです。
トランプはNATOへの関与を大幅に縮小し、日韓などとの同盟関係を基本的に見直し、ブレトンウッズ以来の開放的世界経済を否定しています。トランプには一貫した外交戦略がありません。一部には大統領選挙が本格化すればまとまった戦略を説明するとの期待もありますが、論説は、トランプは30年間一貫した世界観を持っていると言っており、まともな外交戦略が発表されるとは思えません。トランプは外交政策についてのアドバイザーとして5名の名を挙げましたが、外交政策の分野で権威のある者はおらず、期待できません。
論説は、トランプ大統領の米国へのダメージは限られたものとなろうと言っているが、世界のリーダーの地位を放棄するような政策は、米国に決定的なダメージを与えるでしょう。
トランプの支持の原動力は、経済的恩恵を受けていない層の挫折感と怒りであり、トランプの外交政策が支持を受けているわけではありません。
今後、大統領選挙戦で政策論争により重点が置かれるようになるにつれ、トランプの外交政策がいかにお粗末なものであるかがさらに浮き彫りにされるでしょう。
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