2024年11月24日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年4月28日

30年間変わらぬトランプの世界観

 トランプは、NYT紙に9万5000ドルで米外交政策に関する全面広告を出して以来、約30年間、一貫した世界観を持っている。簡単に言えば、トランプは、米国の同盟国とパートナー国は米国から搾取していると考えており、国際秩序における米国の指導的役割をやめさせたいと思っている。トランプは、繰り返し、なぜ米国が日本、韓国、ドイツをタダで守らなければならないのかと問うている。NATOへの米国の関与縮小を約束し、東アジアに基地を維持することで米国が得ることは「個人的には無いと思う」と言った。これは、より均衡のとれた負担の分担についての話ではない。トランプは、十分にカネをもらえるのでなければ米国は同盟国を持つことから殆ど何も得られない、と信じている。

 彼は、米国が過去30年間に署名した貿易協定全てに反対し、米国に過大な利益となるような貿易協定を受け入れるよう強いるべく、関税、その他の保護主義的手段を用いたがっている。他国によるシーレーンの利用に課金することも示唆している。彼が大統領となれば、開放的なグローバル経済は閉ざされよう。

 トランプは、同盟国を避け、プーチンその他の独裁者と取引をしようとしている。トランプはプーチンの支持を受け、米露関係の改善を求めている。

 他方、米本土への脅威に対処するために、トランプは、文民を対象とし拷問を用いるやり方を約束している。

 大統領に選ばれればこれらの立場を穏健なものにするだろうと考える者もいるが、何十年もこうした考えを持ってきた70歳の人物がそうするとは思えない。

 彼が選ばれた後、欧州とアジアの同盟国は、米国との安全保障関係が損なわれないか心配することになろう。ロシアと中国は、何十年もかかると思っていた、米主導の同盟システムの破壊を、大統領の任期一期で達成し得る、前例のない好機を手に入れることになろう。


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