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2016年5月10日

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田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『挑戦者たち-男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で2018年ミズノスポーツライター賞受賞。

食べなれた味でないと嫌がるアメリカ人

 アメリカ人は平均すると、食に対する許容範囲が極端に狭い国民性だと思う。

 慣れないもの、未知のものを食べることに、異常なまでの恐怖心を抱いている人も珍しくない。ハムサンド一つでも、いつもの食べなれた味でなくては嫌なのだ。

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 だからこそマクドナルドなどのチェーンが発達したのに違いない。テキサスでもカリフォルニアでもフロリダでも、マクドナルドに入ればいつもと同じハンバーガーが食べられる。これだけ広い国なのに地方名物の食べ物が極端に少ないのは、そういう背景のためではないかと思う。せっかく旅行に来たのなら、地元特産の珍しいものを絶対に食べなくては、という日本人とは正反対で、アメリカ人はあくまで食べなれた味が好き。「珍味」など食べたくないのである。

 嗜好だけでなく、コルステロール値を気にし、塩分の制限を受けている人もいる。ビーフやポークなどを避ける人、中には厳格なビーガン、近頃はグルテンを避けている人も珍しくない。

 「何でもいい。おまかせするわ」

 「あなたと同じものでいいわ」

 というような会話は、英語ではめったに耳にすることはない。コーヒーに入れるミルクの種類まで自分で選ばないといやな人たちなのだ。

 そんな中で「Omakase」文化がニューヨークで人気になったのは、かなり画期的なことである。やはりニューヨーカーが一般のアメリカ人に比べてオープンマインドで新しいものに貪欲、好奇心が強いからに違いない。

ニューヨーカーの生活に根付いた日本食

 もっともニューヨーカーでも一昼夜にして「Omakase」を受け入れる準備ができたわけではない。

 和食がこれほどニューヨークに浸透してきたのは、ここ四半世紀あまりのこと。

 私がニューヨークに移り住んだ1980年には、ニューヨークで人気の和食といえばせいぜいSukiyakiと Teriyakiだった。

 ところが90年代には、寿司ブームが訪れる。ヘルシーで低カロリー、体に良くて美味しいとニューヨーカーたちも気づいたのである。

 「日本人は生魚を食べるの? 気持ち悪い!」と言うようなニューヨーカーは、今ではどこを探してもいない。日本食レストランの看板を上げてSushiがメニューにないと、お客は憤然と席を立って出て行ってしまうほどなのだ。
そしてここ数年は、ラーメンブームも到来した。

 毎月のようにあちこちに新しいラーメン屋が誕生し、豚骨系、鶏がらスープ系、昔懐かしい煮干出しの和風ラーメンなど何でもある。日本と同じく人気のラーメン屋はいつも行列が出来て、普段はせっかちなニューヨーカーたちも辛抱強く待っている。

 また日本酒のブームと同時に居酒屋文化も人気となり、IzakayaあるいはJapanese Tapas Barと称する赤提灯もよく見かけるようになった。他にも手打ち蕎麦の店、お好み焼きの店、ビーガンも多いニューヨーカー好みの精進料理やマクロビオティックのお店も大人気だ。

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