WEDGE REPORT

2016年5月10日

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田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『挑戦者たち-男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で2018年ミズノスポーツライター賞受賞。

 こうして和食は着実に時間をかけてニューヨーカーの生活に浸透した。今ではJapanese cuisineイコール美味しくてヘルシーなもの、という絶対的な信頼がニューヨーカーの間に根を下ろしたのである。

 そんな背景の中で、いよいよ真打ち登場。板長が腕をふるう「おまかせ」が上陸したのだった。「シェフが選んだ最上の食材」というコンセプトが、ちょいとスノッブなニューヨーカーの心を掴んだのだろう。

 調べてみると、あるわ、あるわ。市内の和食レストランで「おまかせ」を出している店はざっと数えても100軒はあると思う。お値段はだいたい100ドルから、200ドルくらいまでで、決してお手軽ではない。

トライベッカにあった「Rosanjin」のOmakase

メニューは“Omakase”のみでも大人気!

 たとえば、ウェストビレッジに「Nakazawa」というお寿司屋さんがある。ドキュメンタリー映画「Jiro Dream of Sushi」にも登場している、かの数寄屋橋次郎で修行した中澤シェフが経営するお店だ。

 メニューは寿司のおまかせのみで、テーブル席は120ドル、カウンターは150ドル。これに飲み物、税金、そして今のニューヨークではだいたい20%のチップを置くのが習慣なので、一人の予算は平均250ドルにはなるだろう。

 予約は30日前からしか受け付けていないのだが、特に10席しかないカウンターはあっと言う間に予約で埋まってしまう。一度くらい行ってみたいけれど、未だに予約が取れたためしはないほど人気のお店なのである。

 そんなわけで、エドワードに自慢できるほどニューヨークの「おまかせ」を体験してみたわけではない。

 でもこれまでの「Omakase」で最高だと思ったのは、友人の誕生日で行ったレストランだった。「Rosanjin」というトライベッカにあった店である。

 舌が切れそうなほどきれいにぴんとはったお刺身、板前さんがテーブル席まで来て土鍋から盛り付けてくれた鯛めしなど、何を食べてもしみじみ美味しく、日本の高級懐石料理と比べて何ら遜色なかった。ただ宣伝下手だったのか、2016年2月に閉店したのはとても残念なことだと思う。ニューヨークのOmakase競争も、半端ではなく激しいのである。

 ニューヨークは「世界で二番目に美味しい街」とされている。これは決して卑下しているのではなく、どこの国の料理でも本国の次に美味しいものはここにあり、という自慢なのである。少なくても和食に関する限りでは、決して嘘偽りではないと思った。

  
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