2024年11月22日(金)

ちょっと寄り道うまいもの

2009年12月28日

 「お雑煮のだし? 基本は昆布です。お雑煮も神仏にお供えするということもあって、生臭物を慎むということで」

 と昆布や鰹節を商うだしの老舗、「うね乃」の4代目、采野〔うねの〕元英さん。そのために、食べる時に削り節をふりかけたりもするのだと。

 生臭物にこだわらないとしても、ふつうの鰹節ではなく、血合いを除いたもの、あるいは特にマグロの血合いを抜いた削り節を使う。強いだしにはならぬが、優しい味わいになる。そのままでは物足りなく感じるかもしれないが、この特別な味噌とは合う。お雑煮はこうあって欲しいと思う味になる。

 具には頭芋〔かしらいも〕(サトイモの仲間、ヤツガシラ)と丸い小餅が基本。家によっては小芋、雑煮大根(若い茎大根など)を入れることも。

 頭芋は人の頭になり、出世するように。

 小芋は子孫繁栄。

 大根は大地に根をはって生きるように、と。

 そして、何よりも、皆と争わず、まるく暮らせるようにと願って、材料は切らずにまるのままを茹でて使う。

 思えば、京風のお雑煮など食べたことがない。北海道人と九州人の家庭では縁がなかった。改めてこんな話を聞くと、食べてみたくなるのが道理だ。さて、どこで。

 大阪の下町に「津むら」という料理屋があった。少々不便なところにあったが、食いしん坊はわざわざ出かけた。私もその一人。

趣ある町家で上質の味を楽しめる「祇園 大渡」。昨夏、開店した注目の料理屋だ。

 その主は早期退職で好きなことをすると先だって店を閉めてしまった。が、長年仕えた弟子が、京都は祇園で自分の店を持った。

 「祇園 大渡〔おおわたり〕」。そこで無理を言った。

 師匠の跡を継ぎながらも、茶事を好む大渡君らしいコースの設定がすでに出来ている。これでもかと季節の美味を並べる豪腕。そこに白味噌のお雑煮も加えてもらった。

 うね乃のだしに関東屋の白味噌で。

 なるほど。甘党ではない身ながら、この心地よい甘みは旨みである。新しい年が間違いなく、好ましいものとなる予感を覚えるようなほのぼのとした旨さ。

 京都はお雑煮でも違う。品がある。さて、食材を買い込んで自宅で真似するか、また、食べに行くか……。


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