2024年4月25日(木)

安保激変

2016年5月6日

過大な提案をしたフランス艦は大丈夫か?

 フランスの提案内容は、バラクーダ型原子力潜水艦の動力源を小型のスコルペヌ型潜水艦に搭載している通常動力に置き換え、プロペラの代りにジェット水流推進機関、強力なソナー、ハイドロプレーンを応用した抵抗と走行ノイズの減少などの性能を有したものとなっている。フランスの提案は、カタログ上は理想的に見えるが、原子力潜水艦の推進装置を通常動力に切り替えることやジェット水流の採用を含め、フランスは自国の潜水艦にさえ搭載していない技術を提案している。実現には多くの技術的課題を克服しなければならないだろう。

 潜水艦が12隻になれば、水上戦闘艦の隻数と同数になる。そうなれば海軍の戦略と作戦運用に大きな転換が必要となるが、豪州海軍にその準備は整っていない。潜水艦に関して言えば、豪州にとっては日米との戦略的連携よりも、コリンズ型の失敗を繰り返さず、とにかく動ける潜水艦を作り、長く運用したいという切実な事情がある。そうりゅう型はすでに運用実績があるが、2050年以降の運用も考えるなら、フランスの提案する新しい潜水艦の方が豪州のニーズに合ったのだろう。

 潜水艦は通常3隻が1組となり、1隻は任務、1隻はメンテナンス、1隻は訓練を行う。このため、12隻の潜水艦を導入しても常時任務につけるのは4隻に過ぎない。4隻でインドネシアからパプアニューギニアにつらなる列島線、南太平洋、そしてインド洋をカバーするのは至難の業だ。豪州が南シナ海で中国の潜水艦を牽制するようなことはあまり期待できない。しかも、12隻そろうには2050年まで待たなければならない。

 他方、日本の潜水艦は米海軍の潜水艦と協力して、冷戦期はソ連の潜水艦の、そして現在は中国の潜水艦の太平洋へのアクセスを牽制する戦略的な役割を担ってきた。中国の潜水艦増強が続く中、海上自衛隊は従来16隻だった潜水艦の数を22隻に増強している最中で、東シナ海から南シナ海により多くの潜水艦を投入することが可能になる。豪州は日本にとって準同盟国と呼べるほど重要なパートナーとなったが、潜水艦に限れば、運用に関する考え方の違いから協力が難しいのが実情だ。


新着記事

»もっと見る