輸出を支える国内体制が整っていない日本
選定結果が公表される直前、現地メディアでは、日本が海外向けの防衛装備品を生産した経験がないために選考から外されたとする報道があった。日本政府は2014年4月に、それまで武器輸出を事実上禁じていた武器輸出三原則に代わる防衛装備移転三原則を閣議決定した。日豪潜水艦共同開発は、この新原則の下で初の大型案件として期待されていた。
だが、新原則ができても、装備品の構想から研究開発、取得、維持・整備を一元的に管理する防衛装備庁ができても、日本の防衛産業はまだ海外への輸出に慎重で、輸出を支える国内体制も整っていない。さらには、契約を勝ち取るために必要な情報とロビー能力も不十分である。このような状況で、最も敏感な潜水艦のステルス技術の移転を初の案件として進めることには、はじめから無理があったと言わざるを得ない。
豪州政府は、バラクーダ型を採用する理由として高度なセンサーやステルス性能、そして現行のコリンズ型に似た航続距離と耐久性が豪州のニーズに最も適していることを挙げ、コスト、スケジュール、実施能力、ライフサイクルを通じたサポート、そして国内産業の関与という観点もふまえて決定したとのみ発表している。
豪州が1980年代に採用した現行のコリンズ型潜水艦は、「失敗作」とされ、「海中のロックバンド」と揶揄されるほど静寂性に問題があった。2009年の国防白書で、このコリンズ型に代わる潜水艦の建造が打ち出され、今年3月の国防白書で12隻の新型潜水艦を建造することが最確認された。同白書では、新型の潜水艦は地域において優越を保ち、米軍との相互運用性を保つとされている。最初の潜水艦は2030年代始めに導入され、すべてがそろうのは2050年頃とされている。