2015年度は低成長だが失業率は低下
2015年度の経済成長率は0.8%と低いものに止まりました。これは、実質的にゼロ成長であったと言えるでしょう。第一に、2015年度が閏年であったため、自動的に成長率が高めになることを差し引いて考える必要があるからです。加えて、2014年度は消費税率引き上げ後だったため、「駆け込み需要の反動減」があり、GDPの水準が実力以下だったのですが、それと比べても低い成長率だったからです。
上記によれば、成長率が低いと、景気が悪いと考えて良いはずです。したがって、成長率の数字だけを見ると、昨年度は景気が悪かったということになります。
それなのに就業者数が増加し、失業率が低下して労働力が不足しているのは何故なのでしょうか。考えられる要因は二つあります。
第一は、日本経済が人手を必要とする体質に変化しつつあることです。第二は、GDP統計が間違えていて、実はもっと成長率が高い、という可能性です。
人手を必要とする産業が伸びている
産業別に労働者数を見ると、増えている筆頭は医療・福祉です。高齢化により、医療や福祉のニーズが高まっていることは自然なことです。問題は、医療や福祉が機械化しにくい分野だということです。つまり、「製造業は機械化が進んでいるので、一人当たりGDPが医療等の数倍ある。したがって、製造業の就業が1人減ると、医療や福祉の就業者が数人増えてようやくGDPが前年並みを保てる」、といった事が起きているわけです。製造業の技術が多少進歩したとしても、せいぜい「製造業が2人減って医療等が数人増えてGDPは昨年並み」といったところでしょう。
そうなると、GDPは昨年と同じ水準だし、製造業の技術は進歩しているけれど、それでも人手が足りない、という事が起き得るのです。
そうだとすると、今後の日本経済にとって最も必要なことは、労働生産性の向上(労働者1人当たりの生産量の増加)だという事になります。バブル崩壊後、長期にわたって失業問題が最大の課題であった日本経済ですが、今後は労働力不足が最大の課題となる、というわけです。
そうなると、省力化投資が活発化してくるでしょう。これまで企業は省力化投資に不熱心でした。安い時給でいくらでも非正規職員が雇えたからです。したがって、今の日本経済には「少しの省力化投資で生産性が大きく向上する工程」が山のようにあるわけです。
そうなると、今後は省力化投資が活発化し、景気はよくなり、生産性もあがるでしょう。日本経済にとって明るい材料だと言えますね。