「ゼロ成長だから不景気」と言われる理由は技術進歩
では、成長率がゼロだったら景気は良くも悪くもない、という事なのでしょうか? そうではなく、「ゼロ成長だから不景気だ」と言われるのです。
ゼロ成長ということは、前年度と同じ数量のモノが作られて売られて使われた、ということです。それならば、何も問題は無いようにも思えるのですが、何が問題なのでしょうか。それは、技術の進歩で失業が増えるからなのです。
技術の進歩というのは、新しい発明発見の事ではなく、日本で使われている技術の水準のことです。企業が設備機械を最新のものに買い替えると、1人当たりの生産量が増えますから、今までと同じ量のモノを作るために必要な人数が減ります。昨年と同じ量のモノしか生産されなかったとすると、必要な労働力が減りますから、その分だけ失業が増えてしまいます。だからゼロ成長は不況と言われるのです。
もっとも、日本では、いずれの企業もそこそこ立派な設備機械を持っているので、これを最新設備に入れ替えたとしても、それほど急激に必要人数が減るわけではありません。そこで、0.5%程度の経済成長率があれば、失業は増えないと言われています。逆に言えば、労働力が不足している時には0.5%程度の経済成長しかできない(それ以上の成長をするとインフレになってしまう)ということになります。こうした成長率を潜在成長率と呼びます。
中国では、未だに旧式の機械を使っている工場も多いため、最新式の機械を導入すると一人当たりの生産量が激増します。そこで、7%くらい成長しないと失業者が増えてしまうと言われています。日本でも、高度成長期には今の中国と同様に潜在成長率が高く、「5%しか成長しなかったから不況だった」などと言われていたものです。