日本のコンテンツ業界が何の努力もしてない間に、世界中にJカルチャーのファンが存在しています。ユーザーの嗜好は多様ですが、日本人との違いは、「日本っぽいサブカルチャー」をごった煮的に捉えて、自由にチョイスするという点です。アニメを起点にしながら、コミック、ゲーム、音楽、コスプレ、ファッション、食、コスメなど多岐にわたって、僕ら日本人は別種だと思っているカルチャーも、彼らは「Jカルチャー」として一緒くたに捉えています。この感覚を理解する必要があります。
これらを踏まえると、BABYMETALは、コスプレ的な衣装、日本語歌詞とJポップのフォーマットよるメロディなど「クールジャパン」的要素を備えています。加えて、ローティーン(欧米人からは日本人は年齢以上に子供に見えますし)がやっていると物珍しさもあって話題になりやすいという利点もありました。
なぜBABY METALは他と差別化できたのか
このように海外のJカルチャーファンからは、日本独自の分野「アイドル」の1アーティストとして認知されていったようです。それだけなら、目新しい現象ではありません。おそらくアメリカの音楽市場を象徴する指標ビルボードでチャートインすることはできなかったでしょう。
BABYMETALが他のアイドルやアニソンシンガーと違ったのは、メタルロックファンの支持を得たことです。
「ヘヴィメタル」は、1970年後半から80年代に掛けて一世を風靡した音楽のジャンルです。今ではどこの国でもマイナージャンルとなっています。ただ、メインストリームからは消えても、国を超えて、アーティスト同士やファンがネットワークを持っていて、グローバルニッチなジャンルとなっています。音楽にはいくつかこういうグローバルニッチなネットワークがありますが、メタルファンは特に絆が強いように感じます。
LAで音楽マーケティングを学び、アメリカ人ミュージシャンとの交流も深いSayaka Shiomi氏によると、今回のBABYMETALの成功について「この数年アメリカでも80年代メタル返り現象が徐々に来ているのでタイミングも良かった。メタル文化は親から子供へ受け継がれ、またメタル専用ラジオなど日常的に楽曲に触れる環境がある」とのことです。「Kissのジーンシモンズや、メタリカのLars Ulrichなどのビッグアーティストが、BABYMETALはクールだとSNSで口コミする様になったためメタルファンの興味が上がっていった」という指摘も重要です。アメリカにおけるメタル復権の流れもBABYMETALの成功を後押ししたようです。
「BABYMETAL」は当初から、大のメタルファンであるプロデューサーKOBAMETALによる細部にこだわったプロデュースが行われてきました。バックバンドは「神バンド」と呼ばれ、日本の一流のメタル系ロックミュージシャンが務めています。メタルロックへのリスペクトと丁寧な音楽プロデュースが本場のメタルファンからも受け入れられました。この丁寧な職人芸は日本人らしいプロデュースワークと言えるでしょう。日本の製造業を支えてきたのは職人芸を持つ中小零細企業と言われていることが思い出されます。