多様なプレイヤーが必要
ところがこの市場では、目下、“なんにも”起こっていない。市場に参加登録しているのは主に買い手たち。日本の都市ガス会社や電力会社や総合商社だ。みな世界のLNG情勢に詳しい。とりわけ米国天然ガス動向を勉強しつつ、今後の日本着LNG価格は軟調、先安、と、一様に見通してしまう。だから、だれも先物を買わない。だから価格が見つからない。だいたい“よそ者”を簡単には入れない仕組みです。JOEの取引要綱に、「各取引参加者が他の取引参加者に対して与信を設定し、取引可能な者同士でのみ取引が成立する」と書いている。鞘抜きや、投機売買を生業にしている小規模トレイダーたちが参加できない。
これは、つまらぬ話ではないか。ワクワク感が全然ない。カネを掴め! 英雄譚とホラ話、愛と冒険にあふれるトレイディングビジネスに、公益企業の社員がキャリアを賭けるとはなかなか思えない。日本勢と外国勢、生産側と需要側、ヘッジャーとスペキュレイター。「日本LNGハブ」市場では、多様なプレイヤーが市場で取引しなければ、いけない。
総括しておこう。
経産省は、日本国内でLNGを取引する市場の形成をめざす。この市場で「需給で決まるLNG価格指標」を作り出し、日本から発信するのが「日本LNGハブ」市場構想である。
さて、この市場つまり「場」はどこに建つのか。価格報告機関が発信するメディアの上の仮想空間に成立するのか。それとも、既にあるJOEのLNG店頭市場の取引要項を手直しすれば、活性化するのか。
多様なプレイヤーを包摂できるのは後者だろう。取引単位をさらに小さくし、参加資格要件も緩めればよい。だが、化粧直しとなった店頭市場が、日々発信しはじめるLNG価格指標が、現物LNGの需給を材料にして変動するのかどうかは、また別の話なのだ。
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