海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年5月17日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

日本人の「お辞儀」

 2009年11月、オバマ大統領は天皇、皇后両陛下を訪問した際に、握手をしながら90度のお辞儀をしました。私事で恐縮ですが、その頃、筆者はアメリカン大学(ワシントン)異文化マネジメント研究所で客員研究員として米大統領選挙を研究していました。同研究所のゲリー・ウィーバー所長とオバマ大統領のお辞儀について意見を交わしたことがあります。

 ウィーバー所長は、日本文化に敬意を示したオバマ大統領を文化的感受性が高いと評価していました。ただ、同所長は、オバマ大統領は握手とお辞儀を同時にすべきではなく、どちらかを先に行うべきであったと指摘していたのです。

 1980年代、日本の百貨店における新入社員教育では30度、60度並びに90度のお辞儀の練習を行いました。お辞儀は非言語コミュニケーションの一つであり、日本人はその角度によって相手に対する敬意の度合いをメッセージとして発信します。言語化せずに、お辞儀を通じて相手と気持ちを通わせることが可能になるのです。しかし、異文化環境では自文化の動作が他文化出身の相手に異なって解釈され、意思疎通ができない場合があります。

 一部の米国人は、オバマ大統領が天皇陛下に深々とお辞儀をした動作を、「敬意」ではなく「謝罪」及び「弱さ」と捉えたのです。コミュニケーションの視点から説明しますと、送信者である同大統領の意図したメッセージ(敬意)と受信者である米国人の解釈(謝罪・弱さ)が一致しなかったのです。言うまでもなく、効果的なコミュニケーションは、送信者の意図したメッセージを受信者が正確に解釈した場合に成立します。今回の広島訪問が原爆投下に対する謝罪目的でないならば、オバマ大統領はリスクの高い深々としたお辞儀は回避するべきでしょう。

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