入居企業毎に異なる 巨大倉庫活用の事情とその方法
「物流施設を集約することによるコストメリットもあるが、それよりも顧客への納期短縮が最大の狙い」。家電主体の通販大手・ジャパネットたかた。星井龍也専務執行役員は、2009年10月に愛知県春日井市のAMB春日井・小牧東ディストリビューションセンターへ、従来2カ所あった物流拠点を1カ所に集約した狙いをこう語る。
(写真提供:AMB プロパティ ジャパン インク)
複数のメディアで通信販売を行う同社は、一商品当たりの販売台数も多い。また、その主要売上は「東名阪で約70%」に達するという。大阪と首都圏の中間、そして日本の真ん中に位置するこの地区は、家電メーカーなどの工場も集積しており、流動性の高い数百アイテムを中心に多くの在庫を確保しておくことで、「顧客からの注文を受けて翌日には配送、設置できる」(星井専務)というメリットをもたらす。
「大手自動車メーカーのサービスパーツ(ショックアブソーバーやライトの一部など)の保管と倉庫内の安全性の確保が狙い」。同じくAMB春日井に入居する大手自動車メーカーから同施設でのサービスパーツの保管、入出庫作業を請け負うホンダロジコム。田辺晃プロパティ事業推進室室長は、「モデル事業所として人の作業所とフォークリフトの移動区間を分離した安全設計」を特徴に挙げる。
「全国の営業所から集約された冷凍、チルド製品を東海一円に配送するハブセンター的な役割」。AMB春日井の最上階に入居するキユーピーの子会社であるキユーソー流通システム。キユーピー向けの物流はもちろん、大手食品メーカーを含む3000~4000社と冷蔵・冷凍製品物流契約を結び、取扱量は他社向け物流が約70%を占めるという。
問屋向けを主体に一日5万ケースを配送するが、「近隣に民家がないので24時間稼働しても問題なく、大口商材を集約することでコストメリットは従来の3~4倍」と関係者は語る。同社は冷凍・冷蔵品を扱うだけに、室外機設置の関係で最上階を指定。さらにトラック搬送口と外気を遮断するためにドックシェルターと呼ばれるオプション設備を取り付けている。
巨大マルチ倉庫の仕様は、事前のオプション仕様を除けば中国のマンションよろしくガランドウ状態で、内装他は入居企業が施すのが通常。もちろん付帯設備への投資は伴うが、「施設を自前で持つより、フレキシブルな対応が可能」(物流関係者)という声が多い。このフレキシブルという表現、実は長引く不況や成熟した日本の消費社会を投影した物流事情を反映しているのだ。
「従来のような中・長期契約が少なくなり、ものによっては1年単位の契約も出始めている。そのために大きな専用倉庫を建設するメリットはない」。物流大手である日本通運。山本修・広報部次長は、荷主の契約期間の短縮化を指摘する。
「製品寿命が大幅に短くなり、少量多品種の製品、商材を短期間で取り扱わなければならなくなった」。前述の河田氏の分析である。しかも企業の財務体質悪化から物流コストの削減と在庫を極力圧縮する傾向が高まり、ITを駆使した利益を生み出す製品管理センターとしての役割が物流と物流倉庫に課せられてきたというのだ。