「荷主の注文する内容が変わってきた」。海運会社OOCLを姉妹企業に持つ香港系3PL業者で、物流システムを提案するOOCLロジスティックスジャパン。樫山峰久・取締役経営企画本部長は、顧客要件へのより詳細な対応が必要となるケースが最近増えたと明かす。
効果的 (写真提供:プロロジス)
たとえば、ワールドワイドで調達される商材のHSコード(貿易の分類コード)が出荷国ごとにバラバラで、どのコードがどの商品か判別し難い場合がある。OOCLロジでは、いったん受け取ったコードを各商品別に整理、データを一目瞭然に加工し直し、荷主に通関のサービスを提供する。「単に荷物を預かって運ぶだけでは、事業として成り立たない。陸・海・空輸と倉庫まで荷主に合わせたSCM(サプライチェーンマネジメント)の構築の提案が3PLに不可欠」と、樫山氏は物流業界の変わりぶりをこう解説する。
3PL。一言で言えば、従来企業が物流子会社や大手物流業者に一括で丸投げしていた物流業務を複数企業に委託するビジネスモデルだ。企業は、この3PL業者が提案する運輸、情報、倉庫の各システムをカフェテリア方式で選び、安価で最適なSCMを構築する。こうした選択方式に、マルチで対応する外資の巨大物流倉庫は打ってつけなのだ。
国際調達の多様化で
フレキシブルな
マルチ倉庫の活用へ
「日本通運、日立物流、センコーの3社が、物流コンペティションの常連」。物流大手の幹部は、3PL分野のシェア争いに鎬を削っているのが、この3社だと明かす。特に日立物流はメーカーが抱えきれなくなった物流部門を丸ごと買収。07年4月に買収した資生堂の化粧品物流子会社を皮切りに、09年7月の内田洋行の子会社の買収など、国内外でM&Aを通した3PLの業容拡大に取り組んでいる。
「00年代以降、イオンの物流改革の波に乗って、企業の物流ソリューションに取り組んだのが転機。09年度も前期を超える新規受注が見込まれる」。日立物流は、年度後半の新規受注にも手応えを感じている様子。日本通運も、「物流外資ファンドの日本参入を機に3PL業務を強化したが、既存倉庫のリニューアルや新規建設を含めた投資は06年度以降、高水準で推移」と外資のマルチ倉庫の活用とともに、自社倉庫を活用した新規受注に積極姿勢だ。
「09年の7月から、リーマンショック以降凍結していた開発案件が動き出した」。プロロジスの山田御酒・プレジデント兼CEOは、キリン物流やセンコー向けの施設開発を再開したことを明かす。山田氏によれば、リーマンショックを境に物流をアセットから切り離し、本業に集中する経営者の意識が強まっているという。
「SCMの中で、川下の消費に変化はないが、より安価で良品の製品開発を追求するために川上の生産拠点がワールドワイドに移り変わっている。生産地が変われば必要な倉庫の立地も変わる」。ラサールインベストメントの中嶋康雄代表取締役兼CEOは、商流や物流に合わせた最適な倉庫利用の有益性に、企業が気付き始めたと指摘する。
「情報と物流は、企業のノウハウであり企業戦略だ。決して見せるな」。流通小売りに革命を起こしたダイエーの故中内氏の言葉である。それまでの問屋経由の物流を地域ごとに専用倉庫に集約させて効率配送を実現するRDC(リージョナル・ディストリビューション・センター)が、現在の3PLの走りであるという。
物流各社が使用するロジスティックスとは本来、軍事用語で兵站(へいたん)という意味。武器を安定供給することで戦闘力を維持する仕組みに用いられる言葉だ。「必要な商品を必要な量だけ必要な時間で」。デフレ再燃の日本にあって、「物流外資」の巨大マルチ倉庫を活用したSCM戦略は、企業が勝ち残る強力なアイテムとなりつつあるようだ。
■「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
週に一度、「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。