城戸さんの周りには様々な分野の地元の「クリエイター」たちが集まり始めていた。
城戸さんをリーダーに、シェフの伊集院浩久さん、映画や落語のイベントを主催するプチシネマの下池奈津子さん、鹿児島の南端、坊津で新規就農して野菜作りに取り組む「こころの野菜」の松野下友明さん・いずみさん夫妻。写真家や映像カメラマンも加わった。そして中村さん。
テーブルスのメンバー。右から、松野下いずみさん、城戸雄介さん、中村慎弥さん、久木山雅彦さん、下池奈津子さん、伊集院浩久さん
そんなメンバーが集まって、郷土の良いモノを作り、それを日本全国だけでなく、世界に発信していくユニットを立ち上げたのである。2014年11月のことだ。
名前は「TABLEs(テーブルス)」。中心は7人ほどだが、メンバーを固定せず、志のある人が自由に集うプラットフォームにした。テーブルスのメンバーは皆、自分の仕事に誇りとこだわりを持つ人ばかりだ。
テーブルスのメンバーが持ち寄った品々
〝結成〟から半年あまりで、いきなりテーブルスにスポットライトが当たることになった。米国サンフランシスコの自然食スーパーから鹿児島料理の食事会を依頼されたのだ。
15年6月、テーブルスの主要メンバーでサンフランシスコに向かった。
待ち構えていた米国人たちは興味津々。さつまあげ、豚骨、鶏飯(けいはん)など、米国で広まっている日本食とはひと味違った鹿児島の郷土料理に感嘆の声が挙がった。
もちろん、鹿児島料理と共に出された酒は芋焼酎『なかむら』だ。
「食中酒として飲む蒸留酒は世界的にも珍しいので、関心を持ってもらうことができた」
と中村さん。日本食ブームで、日本酒の需要も増えているが、芋焼酎となると外国人にはまだまだなじみが薄い。テーブルスのおかげで、将来につながる一歩を踏み出せたと、中村さんは手応えを感じている。
城山から望む桜島