手づくりへのこだわり
もちろん、いくら需要の掘り起こしをやっても、目新しさだけでは顧客はつなぎとめられない。誰もが納得する「良いモノ」「本物」でなければ世界には通じないのだ。
中村酒造場の建屋
中村さんは今も徹底した「手づくり」の芋焼酎にこだわり続けている。
原料の麹はもちろん、芋から水にいたるまで、すべての素材を厳選して仕込みに入る。水は地下水をくみ上げているが、「ほんの数キロ上流に行くだけで、まったく味が変わる」と中村さんは言う。
鹿児島には113の焼酎蔵があるといわれる。今から15年ほど前の焼酎ブームの中で、設備投資を行って生産量を一気に拡大させた蔵も少なくない。
かなりの工程を機械化したところもある。そんな中で、中村酒造場は、創業時から使うカメや蒸留設備が今も残り、それを大切に使っている。
中村酒造場の製造工程のほとんどは機械に頼らない。麹を小箱に敷き詰めるのも、室に入れて並べて発酵させるのもすべて手作業だ。さらにそれを伝来のカメに移したり、木棒でかき混ぜるのも手で行う。早朝からかなりの重労働だ。
機械で撹拌すれば簡単に済むように思えるが、菌や酵母が生きている焼酎作りでは、その日の気温や湿度で微妙な手加減が必要になる。
早朝から行われる麹作り