地元の警察担当記者によると、被害者の女性が使っていたスマホの位置情報が途絶えた場所周辺にある監視カメラの映像の分析からシンザト容疑者が浮上。16日に任意で事情聴取したところ、ほぼ全面的に自供し、容疑者の車からは被害者のものとDNAが一致する血痕が発見されたという。
こうした情報は、いち早く首相官邸に細かく伝えられていたが、伊勢志摩サミットおよび広島訪問のためにオバマ大統領が訪日するのを目前に控えた時期だっただけに、米軍属の逮捕によって基地問題が再燃することを懸念した菅義偉官房長官が逮捕にゴーを出すのを渋り、19日までずれ込んだとの見方が官邸関係者らのあいだで専らだ。
築きあげてきたものがガラガラと崩れていく
この事件による影響を懸念するのは、菅官房長官だけではない。
「何年もかけて築きあげてきたものがガラガラと崩れていくのを見ているようだ」
本稿で冒頭に登場した政府高官は米軍属が逮捕されたことを受けてこうも嘆いていた。1996年に当時の橋本龍太郎首相とモンデール米国大使とのあいだで普天間飛行場の返還と移設が合意されて以来、はや20年。合意では「5年後から7年後までの全面返還」とされたが、容易には進展が見られないまま。その推進を図る立場の政府高官からすれば、この事件により、県民の反基地感情が高まり、政府が進める辺野古移設に向けた作業に支障が出ることに懸念をせざるを得ないのだ。
そうした県民感情に配慮しようと官邸も躍起のようだ。21日に被害者の告別式に出席するため沖縄を訪問した中谷元防衛大臣が、在沖米軍トップにあたるニコルソン四軍調整官をメディアが見守るなか沖縄防衛局に呼びつけたが、これは菅官房長官の指示によるものだという。「米側に厳しくもの申す」という構図を見せるためだ。
5月23日に安倍晋三首相と会談した翁長知事は、日米地位協定の見直しやオバマ大統領との会談を求めたが、これには応じなかったものの、菅官房長官の肝いりで各省庁の局長級による「沖縄における犯罪抑止対策推進チーム」を結成。より実行力のある再発防止策をまとめることにし、県議選の投票日を目前に控えた3日には、沖縄総合事務局で非常勤職員を採用し、100台規模の車両による「沖縄地域パトロール隊」の創設、警察官100人の増員とパトカー20台の増強などの対策を打ち出した。