2024年7月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年6月15日

 上記の記事は、専門家による現地からの報告で、リビアの悪化する複雑な状況、特に武装勢力間の競争対立が良く分かります。

アラブの春からもう5年

 アラブの春からもう5年になります。民主化への運動は関係国に政治経済上の不安定をもたらす結果となりました。また英国のキャメロンとフランスのサルコジが推進し、米国のオバマが付き合ったリビアへの軍事介入は、国際社会による「人道介入」を認める初めてのケースとしてもてはやされました。しかし、リビアは政府が東西に二分し事実上無政府状態になり、その間で民兵組織が群雄割拠するとともに、ISがシルテで実効支配を強めています。この国にはアルカイダ系の過激派もいますし、欧州に向けて難民の流出ルートにもなっています。今や治安は安定していたカダフィ時代を懐かしむ声も聞かれるといいます。この記事も、多くのリビア国民は内部抗争にうんざりしていると書いています。

 ウェーリーの基本的なメッセージは、①リビアでは統一政府や軍事組織が確立していない、②各地域で武装勢力が割拠し、統一してISに当たるというよりも自己の勢力拡大を優先しており、ISは民兵の間の抗争を利用している、③対IS作戦とそれへの米欧の支援はIS排除よりもリビアの武装勢力間の抗争を激化する可能性があり注意を要するというものです。

 5月16日、ウィーンでケリー米国務長官は、関係国と協議の後、リビアの統一政府の要請により今後軍事支援を行うと述べ、そのために安保理で武器禁輸解除決議を行うことになると報じられています。米国などは、ISによるリビアのシリア化に懸念を募らせています。

 ウェーリーは、民兵組織を使って行うことになるシルテ奪還作戦には慎重で、一定の統一政府、軍隊を作ることが先決だとします。新たな統一政府に力をつけていくための政治努力については、国連がもっと能動的に一層の努力をすべきではないでしょうか。
  
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