2024年4月26日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2009年12月23日

 つまり来年に入ってから、中国政府はインフレの発生に怯えながら薄氷の経済運営をやっていくしかないから、今年のような「大盤振る舞い」の放漫融資はもはやできやしない。そして、世界同時不況が来年にも長引き、中国の対外輸出は現在のような低迷を続けていくと、2010年の中国経済はむしろ暗澹たる結果を招くのではないか、と思う次第である。

キーワードその2 「不動産バブル」

 実は上述の放漫融資とも関連して、中国は今、史上最大の不動産バブルが膨張している最中である。

 たとえば南方の大都会である深圳の場合、今年の2月から9月まで、新規分譲マンションの価格は1万988元/1平方メートルから2万940元/1平方メートルに上昇した。わずか8カ月で価格は倍増したわけである。北京の場合、03年の段階では、市中心部の分譲マンション価格は4000元/1平方メートルだったが、現在ではすでに「3万元台」に突入している。

 北京政府が発表した北京市民の08年度の一人当たり可処分所得は2万4725元だったから、09年度のそれもそう大きく変わらないだろうが、市民一人あたりの正味の年収はマンションの1平方メートルも買えないという異常事態が生じているのだ。

 上海の場合、09年8月7日付の地元紙の『新聞晩報』は、住宅購入のための上海市民の負担はパリ市民の11倍であると伝えている。実際、上海の浦東地区中心部の不動産価格は東京都心のそれを上回っているケースもある。

 不動産価格の暴騰はもちろん、今までの高度成長を支えてきた主な要素の一つである。不動産が高く売れれば、建築業や鉄鋼・セメント・内装・広告など多くの産業がいっせいに繁栄するからだ。

 国務院発展研究センター・マクロ経済研究部長の余斌氏は最近、「不動産業は中国経済の命脈となっている」と語ったのもその故であろう。

 しかしその一方で、まさに「繁栄」の副産物として、「驚愕」ともいうべきスピードで不動産バブルが膨張しているのである。

 12月中旬、米国のフォーブス誌が「バブル直前状態の7業界」を選んで発表したが、その中で「中国の不動産」が2位にランクインした。同じランキングの中で、米国債がその下の4位であることを考えると、「中国の不動産」がどれほど危険視されているかよく分かるだろう。

 今年、中国経済全体はむしろ下落傾向であったにもかかわらず、どうして不動産価格だけが暴騰しているか。その背景には、キーワードその1で取り上げた史上最大の放漫融資にあった。

 今年6月30日付の『南方日報』は、国務院発展研究センター・マクロ経済研究部の副部長である魏加寧氏のインタビュー記事を掲載した。その中で魏氏は、今年の上半期において、中国の各銀行が行った新規融資のうち、その2割程度は株市場に、3割程度は不動産市場に流れたと語った。

 つまり、成長率の急落を食い止めるために投入された放漫融資の大部分が不動産投機に流れた結果、不動産バブルが暴騰してきたわけであるが、それは勿論、本当の意味での内需拡大や実体経済の回復を意味するようなものではない。バブルは所詮バブルだからである。そして、この12月の中国国内での新聞報道を読むと、不動産バブルの膨張に対する人々の警戒感が高まっていることがよく分かる。

 たとえば12月11日、全国工商連合会・不動産商会の聶梅生会長は、『経済参考報』という新聞の関連記事の中でこう語っている。


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