2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2009年12月23日

 「今年の不動産価格の暴騰は予想を超えたもの、私のような楽観派ですら、そこまで上がるとは思わなかった」

 翌日、人民日報社の開設する自社サイトである「人民網」は関連論文を掲載して、「不動産バブルは中国経済の癌となった」との不気味な警告を発した。

 14日の『中華工商時報』は、「北京・上海・深圳不動産価格急騰、バブルが膨らむ一方」と題する記事を掲載し、この三つの大都会における不動産バブル膨張の事態をレポートした。18日には、かの有名なモルガン・スタンレーの元アジア担当エコノミストの謝国忠氏が、「中国の不動産バブルは再来年には弾けるだろう」と予言しているのに続いて、翌日には『上海証券報』の「評論版」編集長を務めた時寒氷氏が自らのブログで、「中国は不動産バブルの崩壊に備えるべきである」との論文を発表したのである。

 そして、21日には意外な人物から警告が発せられた。

 中国有数の不動産開発会社である万科集団公司の王石董事長(会長)が公の場で、「中国の不動産バブルは必ず弾ける。わが社はすでにそのための準備を整えた」と宣言したのである。

 大手の不動産開発業者自身が「不動産バブルが崩壊する」と言うのだから、この言葉はかなりの重みがあるが、いずれにしても、2010年から、中国経済は「バブル崩壊の危機」にさらされていくのが確実な趨勢となろう。

 そして、不動産業は今、「中国経済の命脈」となっているならば、中国経済はこれから、一体どのような前景があるのかがすでに見えてきたのではないか。

キーワードその3 「蟻族」

 ここ数年、中国では大学卒業者の就職難は深刻な社会問題となっている。ある葬儀屋からの5名の人員募集に500名の大卒者が殺到した話や蘇州市が募集した公共トイレの清掃係に多くの大卒者が応募してきた話など、厳しさを増す就職事情を伝えるエピソードがよく伝わってくるのだ。

 07度年の場合、中国経済は12.9%という驚異的な成長率を達成したにもかかわらず、当年度の大卒者の約3割が就職できなかったことは中国政府の認めたところである。

 今年度となると、国家教育委員会が発表した大卒者の就職率は68%だが、信じる人は誰もいない。それは単に、上からの「就職ノルマ」を課せられた大学側が、卒業証書の発行と引き換えに卒業生に「就職証明書」を強要したことの結果であることはよく知られている。

 たとえ政府が言うように「就職率68%」であったとしても、それはすなわち、今年度の大卒者610万人のうち、約195万人が就職できていないことを意味する。過去5~6年間、ずっとこの調子だから、大卒の失業者の累計人数は膨大であると容易に推測できよう。

 では、大卒の失業者はどういう生活を送っているのか。10月30日付の『中国経済時報』は面白い記事を掲載している。北京の郊外には今、約10万人以上の失業状態あるいは半失業状態の大卒者が住んでいるという。彼らは暖房も浴室もトイレもない狭い一室に住み、自炊しながらかろうじて食べていけるような生活を強いられている。もちろん北京だけでなく、全国各都会にもこのような人たちが大勢いることが北京大院生の調査で判明している。今、彼らは名付けて「蟻族」と呼ばれている。


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