常朝は碁を打てたのかどうか知らないが、「岡目八目」とはうまくいった。こういうことは、日常よく経験するところである。自分の考えが一番正しいと思いこみ、他人に押しつける。やがて独善と非難される。当人は使命感にもえて一生懸命に行い、しかも良く思われない。こんな割に合わないことはない。
普通の感覚でいうと、正義というものは最高の道である。しかし、常朝は、その上にまだあるという。そして何が正義であるかというと、人と話し合うことである。こういうもののとらえ方は特異である。正義というものと、人と話し合うということの間には質的に大きな隔たりがある。前者は学者の論ずる次元であり、後者は実践者の次元である。その意味では、常朝の感覚は行動する人間のものである。
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