2024年7月12日(金)

風の谷幼稚園 3歳から心を育てる

2010年1月14日

 頭をかかえる鳥組の子どもたち。そして迎えた第2回戦。今度は風組も縄なしで走る。するとますます力の差は歴然。鳥組は意気消沈となる。

 ここで天野園長が風組の子どもたちに「やっぱり鳥組はひとつチビだから、風組の方がとても速いね!」と敢えて小さな声で語りかけると、実はその語りに一番耳をとがらせるのは鳥組の子どもたち。悔しさでいっぱいの胸のうちは、聴覚を敏感にするようだ。

 その後、園長が鳥組に向かって語りかける。「どう? 風組速かったでしょ!? みんなも風組になればこういう風に速く走れるよ!」という言葉には無言、無反応…。もちろん、これは結果やライバルに無関心なわけではない。その顔には「悔しくてたまらない」と書いてある。

 そして今度は担任の出番だ。教室に戻ってお弁当の時間、「やっぱり風組って速いよね!」のひと言に、みんなが口々に答える。

 「だって風組だもん!」

 「鳥組より風組の方が速いに決まってるじゃん!」

 空腹が満たされて少し元気にはなったものの、その顔に「悔しい」の文字は浮かんだまま。しかし、この日はそれでおしまいになる。鳥組の子どもたちはその悔しい思いを胸に、お母さんとともに幼稚園を後にする。帰りの道すがら、そして家に帰っての食卓で、いろいろな会話がなされることであろう。そんな経過をたどりながら、子どもたちは昼間の疲れで健やかな眠りにつく。

「やったぁー!」 「なわとびだ!」

 さて、鳥組が実際に「なわとび」をスタートさせるのは、この悔しい思いをした日から1週間後である。「悔しい思いをしているときには何かをして元気づけてやるべきではないか?」「なわとびをしながら颯爽と駆けるお兄さん・お姉さんの姿が新鮮な時にこそカリキュラムをスタートさせれば張り切るのではないか?」素人はそう考えてしまいそうなものだが、それは違うのだ。

 密着レポート第7回「失敗を諦めず悔しさを感じる子どもを育てる」でもご紹介したように、安易な慰めは子どもたちの成長意欲を摘み取ってしまう可能性が高い。いくら慰められても、歴然とした力の違いを一番感じているのは子ども自身である。ましてや、幼児期の1歳の差は身体能力の観点で考えればとてつもなく大きい。しかも、その差は自分の力でなんとかなるというものではなく、時を重ねて体が成長するのを待つしかない。「このもどかしい状況と正対してほしい」「この時間に『早く大きくなりたい』『カッコよくなわとびが跳べるようになりたい』という意欲が育ってほしい」。先生たちはこんな想いを胸に、この期間はあえて慰めることもしなければ、すぐにとびなわを与えることもない。時が熟するのを待つのである。

 この周到な準備を経て、いよいよ「なわとび」のカリキュラムが始まる。再び学級通信を見てみよう。

運動会での風組の走りなわとびを見て、「すごいねぇ。かっこいいね」と言っていた子どもたち。中には、「いつになったらぼくたちもなわとびもらえるの?」と言う奎吾くんの姿もありました。
そしていよいよ今日、「運動会でのみんなの姿を見てて、先生はすごいなぁって思ったんだ。一人ひとりがケンパーやハードル(運動会に向けて、日々に取り入れている体育活動)での大事なことをちゃんと頭に入れて一生懸命やってたよね。そんなみんなだから、今日からなわとびをしようと思うんだ」


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