そう話すと、一瞬戸惑いながらも「やったぁー!」と喜ぶ子どもたち。そして、真っ白なとびなわの入ったカゴを見せると、それはそれは目を輝かせてうれしそうに笑う顔が並びました。
「じゃあ、これから1人ずつ渡していくね」
1人ずつ名前を呼ぶたび、「次は私?」とでも言うかのように、先生を見つめる子どもたち。名前を呼ばれると初めて手にするとびなわを両手で大事そうに受けとる子どもたちでした。
鳥1組 学級通信 「おおばこ」より
先生に名前を呼ばれ、満面の笑みで「ありがとう!」とお礼を言ってとびなわを受け取る子どもたち。中には戸惑いを隠せない子どももいる。待ちに待ったその瞬間は、子どもたちだけでなく周囲の大人をも幸せな気持ちにさせてくれる。
しかし、それも束の間。本番はこれからだ。まず、初日はフロンターレ(密着レポート第8回参照)に行って、先生が「なわとび体操」(なわとびの動きを取り入れたオリジナルの体操)を行い、縄の持ち方、回し方を教える。そして、「さよなら あんころもち またきなこ♪」の歌に合わせて、まず4回続けて跳ぶことに挑戦する。
さすがに初日からできる子どもはいないが、縄が自分の足をくぐれば跳んだ気分になって大興奮。縄が自分の体に絡まろうが、隣の子どもの縄と絡まろうがお構いなし。がむしゃらに4回続けて跳ぼうとする子どもたち。その一方で、風組のカッコいいなわとびの姿と比べて、そのギャップに落ち込んだり、跳ぶことを拒否し始めたりする子どももいる。再び学級通信を見てみよう。
お弁当中、「早く食べてなわとびする」 「先生教えてね」と、やる気満々の子どもたち。お弁当後の中庭では、1日目にして「簡単じゃないんだね……」と涙を浮かべる慶士くんや、「やれば必ずできるようになる」という私の言葉に、「円ばんのときみたいに?」と答える翔太くんの姿。
ほかにも、汗をかきながら跳び続ける子、「やらない」と言う子、なわを持ちながらずっと立ってる子――と、さまざまです。
どの子も“跳べない”からのスタートなだけに、きっとこれからいろいろな葛藤があることでしょう。でも、その葛藤が多くあればあった分、学ぶことは大きいと思うのです。“どうすれば跳べるか” “どうして跳べないのか”、跳べるようになるまでの過程に重点をおいた取り組みにしたいので、家での練習はさせないでくださいね。 鳥1組 学級通信 「おおばこ」より
ここでの反応は子どもの気性にもよるが、これはもちろん想定の範囲内。先生は子どもたちの様子を見守りながら、淡々と次の指導へと移っていく。それは「なわとび」のカリキュラムとは “跳べない” “できない”という壁にぶち当たってからスタートすることに意味があるからだ。
悔しい思いがプラス思考の源となる
では、なぜ“跳べない” “できない”という壁にぶち当たってからのスタートに意味があるのだろう? その大きな目的の1つは風の谷幼稚園の教育の柱でもある「問題は必ず解決できるという思考力」を育成することに深く関わっている。