ついに訪れた戦力外通告 一度は決意していた引退
「球団に言われる前に、自分から辞めるつもりだった」
04年、オリックス2年目のシーズンは、当時の伊原春樹監督との確執や、人間関係に嫌気がさし、この年限りで野球を辞めることを決めていた。シーズン終了後には球団から戦力外通告を受け、中村勝広ゼネラルマネージャーから、「野球を続ける気があるのなら、他球団に口をきいてやる」と言われたが、すぐにこれを断った。とにかく、山﨑に続ける意思はなかった。
「色んな不祥事を起こした。それも、全部自分がまいた種。トラブルメーカーの自分を欲しがる球団なんてどこにもない。それに、自分の力が衰えてきていることは、自分が一番感じていた」
そんなとき、野球界では東北楽天ゴールデンイーグルスが新規参入し、監督に就任した田尾安志氏から熱烈なオファーを受けた。一度はこれを断ったものの、周囲の仲間からの説得を受け、山﨑の心は少しずつ揺れ始めた。
「パパ、野球やればいいじゃん」
野球を続けるか否か。長男の一言は、迷う山﨑の背中を押した。
「子供にね、頑張る姿やもがく姿を見せなきゃって思ってね」
あと1年だけやりきって名古屋に帰ってこよう。そう心に決め、仙台へと向かった。
意地もプライドもかなぐり捨て、田尾監督の指導に耳を傾けた。教えられたことを愚直にやり抜き、終わってみればチーム最多の25本塁打を記録し、見事復活を果たした。
2年目を迎えた楽天にやってきたのは、野村克也監督だった。
「野村監督なんて、絶対相性が合わん。俺は、野村監督が最も嫌いとしているタイプの選手だろ? 正直、終わったと思ったよ」
チームとしての規律を重んじ、野球以外での私生活も厳しく指摘する野村監督のスタイルと、言いたいことを言う山﨑のスタイルがぶつかり合うことはわかりきっていた。早速、野村監督から様々な指摘を受ける。
「人は第一印象で決まることが多い。自分から印象を悪くすることもないだろう」
最初のうちは、そのどれもが野球のプレーには関係のないことだった。
「一度クビになって、ちゃんと人の話を聞こうって気になっていた。だから、聞くことができた」