2024年4月20日(土)

イノベーションの風を読む

2016年8月10日

ソニーの今

 ソニーのスマートフォンXperiaの販売台数は、普及価格帯モデルの絞り込みや不採算地域での事業規模を縮小したことによって、昨年同期に比べて57%減少した。310万台という数字は、世界市場で見れば1%にも満たない。

 依然として大手キャリア3社による、通信料金との抱き合わせ商法でのスマートフォンの割引販売が続く日本のガラパゴス市場では、iPhoneのシェアが60%を超え、ソニーとシャープの端末が10%程度のシェアで2位の座を争っている。

 ソニーは収益構造の改善によって通期での黒字化を目指すとしているが、すでにスマートフォンの所有率が70%を超え、今後、買い替えのサイクルも長くなることが予想される日本市場だけで黒字を維持していくことは難しそうだ。

 2月にバルセロナで開催された携帯通信関連の見本市(MWC)でソニーは、スマートフォンと連動してメッセージを読み上げたりするイヤホン、投影した画面でタッチ操作が可能なプロジェクター、360度の半天球カメラ、そして監視やジェスチャー識別用のカメラや家電リモコン用のセンサーなどを搭載したAmazon Echoのような多機能デバイスの4つの製品を参考展示した。

 これらはXperiaスマートプロダクトと呼ばれており、Xperiaブランドのグローバルな認知を担うための戦略的な商品だと思われたが、その後、具体的な進捗は公表されていない。個々の製品を他社の類似製品と差別化し、その商品価値を明確にすることも必要だろうが、Xperiaスマートフォンのグローバル戦略との連動がなければ、マーケティングコストをかける事業的な意義はないだろう。

  ソニーのデジタルカメラの販売台数は、170万台から80万台に半減している。CIPAの統計によると、メーカー全体からの出荷数量も780万台から480万台と41%落ち込んでいるが、ソニーは熊本大地震の影響によって部品調達ができなかったことが、市場を上回る落ち込みの原因となったと説明している。

 レンズ交換のできないコンパクトカメラの市場は2008年の1.1億台をピークに急激に落ち込み、昨年は2234万台と1/5になってしまったが、今年に入っても市場縮小のスピードが減速する気配はない。一方で、一眼レフやミラーレスなどのレンズ交換が可能なデジタルカメラの市場は、どうやら昨年の1300万台で底が見えたようだ。

 コンパクトカメラにしてもレンズ交換式のデジタルカメラにしても、今後の市場の(再)成長は期待できない。ソニーは製品のラインナップ(製品ミックス)を見直し、レンズ交換式などの高付加価値・高価格帯のデジタルカメラにシフトしつつあるが、そこではキヤノンとニコンの一眼レフとの、1000万台程度のパイの熾烈な奪い合いになる。

 2013年に発売されたPS4は順調に売り上げを伸ばし続けている。今年5月には、全世界累計販売台数が4000万台を突破したとの発表があった。PS4向けのゲームソフトの累計販売も2億7090万本を超えたという。4000万台の内の国内販売の割合は10%に満たないようだが、海外では本体の稼働台数が増えてゲームソフト開発会社にとっての魅力が増し、新しいゲームソフトの開発が進み、それによってユーザーにとっての本体の価値が拡大するという好循環が続いている。

 ソニーは、3月にサンフランシスコで開催されたゲームソフト開発者向けのカンファレンスで、PS4用のVR(仮想現実)ゲームのためのヘッドセットPlayStation VR(以下PS VR)を10月に発売すると発表した。


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