イノベーションの風を読む

2016年8月10日

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 すでにPCゲーム向けのハイエンドのVRヘッドセットは、HTCのVIVEと、2014年にフェースブックに買収されて話題になったオキュラスのOculus Riftが販売されている。どちらも4月頃から本格的な販売が始まったが、4~6月でVIVEが10万台、Oculus Riftが3万6000台販売されたとの推定がある。PCゲームソフトのダウンロード販売サイトのSteamで公表されているVRゲームソフトの販売数は、7月末の時点でVIVEに対応しているゲームソフト数が418本で、Oculus Riftに対応しているゲームソフト数は192本となっており、RoadtoVRがその販売数から2つのヘッドセットの販売台数を推定した。

 これらのVRゲームソフトの開発会社は、4000万のユーザーベースを持つPS4への対応を始めていることだろう。さらにPS VRの発売に合わせて、4Kに対応したPS4の強化版(開発名 NEO)を発売することがリークされており、G&NSはソニーのコンスーマ・エレクトロニクス分野で唯一活気を感じる事業だ。

次に向けた動き

 アップルは8月3日にAndroid OS向けのApple Musicアプリを正式にリリースした。Apple Musicは6月時点で1500万人の有料会員を獲得している。Android OS上でさらに有料会員を増やして「サービス」の売り上げを拡大する狙いもあるだろうが、AndroidスマートフォンのユーザーがApple IDを取得し、Apple Musicを体験することによって、iPhoneに乗り換えるきっかけを作るということも狙っているのだろう。

 9月には新しいiPhoneの発売が予想されている。1997年にスティーブ・ジョブズが復帰した頃のアップルの売り上げは70億ドル強(純利益はマイナスの10億ドル弱)だった。これまでジョブズが撒(蒔)き散らした種のうち、芽を出して大きく育った木に水や肥料を与えて、多くのリンゴを収穫してきたアップルは、2015年度には2340億ドルの売り上げを記録した。iPhoneという大木の寿命はいつまでも続くのだろうか。

 ソニーは6月29日に開催した経営方針説明会で「未来への布石」として、シード・アクセラレーション・プログラム(SAP)やフューチャー・ラボ・プログラムなどを実施しており、ロボティクス技術の家庭での用途を検討中で、事業化に向けた組織を4月に立ち上げたと説明した。実はソニーでは、2012年に新規事業創出のためのR&Dビジネスデザイン&イノベーションラボラトリという部署が設けられ、さらに、新サービスの開発につなげるためのクラウド専属の部署も新設されている。

 ソニーやアップルのように、それまでになかった新しい価値を提供する製品を発明しその事業化に大きな成功を収めると、その事業を盤石なものにし、さらに規模を拡大するためのサプライチェーンの構築と最適化に力を注がなければならない。それには、いくつものアイデアを考えついて、そのなかから人々にとって価値のあるものを選び出し、それを形にして世の中に出すという仕事とはまったく異なったスキルが必要になる。その事業の成長が続けば続くほど、アイデアを形にできる人材は疎んじられ去って行く。新規事業創出を掲げた組織をつくることは簡単だが、その人材を集めることは容易なことではないだろう。

  
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