飲みすぎた翌日は、しじみ汁をすすると酔いを醒ましてくれるようで、ほっとする。この即席みそ汁には、しじみ汁に含有されるアミノ酸の一種「オルニチン」という肝機能を高める成分をたっぷり配合させた。2009年9月に発売すると品切れ店が続出、10月中旬から1カ月半は同社でも異例の販売休止とし、供給量を3倍に増やした。
「1杯でしじみ70個分のちから」
「1杯でしじみ70個分のちから」には、オルニチンが、しじみ汁2杯分を上回る25ミリグラムほど配合されている。お椀1杯にしじみを多めに盛ると35個程度。「70個分」のネーミングは、そこから来ている。
ただし、しじみ汁の味をイメージして飲むと拍子抜けするかも知れない。味は鰹節や昆布などのダシがしっかり効いた、正統派のみそ汁という感じ。オルニチンはしじみから抽出するのではなく、特許出願もしている同社独自の製法で効率よく取り出しているのだ。
製法開発のきっかけは研究部門が発見した植物性の乳酸菌。これをみその製造工程で加えると、大豆および米のたんぱく質の一部をオルニチンに変換させることが分かった。ロングセラーの「あさげ」に代表される即席みそ汁は、永谷園の主力商品群であり、08年半ばからオルニチン製法を有効に活用した商品の開発プロジェクトが立ち上がった。
「わたしでいいの?」
味づくりからネーミングやパッケージデザインに至るまで、商品企画を担当したのはマーケティング企画部商品企画グループの小川菜穂(35歳)。社会に出るまで「料理もほとんどしなかった」し、文学部出身なので1998年の入社時に社内で人気のある企画部門に配属された時は「わたしでいいの?」と思ったという。
だが、お茶漬け、即席みそ汁、ふりかけ、ちらし寿司の素といった主力商品の開発に参画しながら力をつけてきた。これまで04年発売の「おみそ汁の大革命野菜いきいき」、07年の「カレー鍋」シリーズといったヒット商品を手掛けている。今回の商品企画でポイントとなるオルニチンは、肝機能を高めるだけでなく、筋肉の増強や基礎代謝の向上という効能も認められているという。脂肪の燃焼など基礎代謝を活発にする効能に焦点を当てれば、「ダイエット」を訴求することもできる。
効能が多いということは商品設計の自由度を広げるが、むしろ企画担当者を悩ませることにもなる。ただ、小川は研究部門からの情報をもとに、「迷うことなく肝機能にスポットを当てよう」と決めたという。