NATOのメンバー資格も討議か
首脳会談の結果、ロシアは段階的にトルコへの経済制裁を解除し、トマトなどの農産物の輸入も解禁した。ロシア観光客のトルコへのチャーター便の再開でも基本的に合意した。トルコはガス・パイプライン建設計画の協議を再開し、ロシアの原発建設に特別待遇を付与することをロシア側に伝えた。
しかし、本当の問題は先送りされたままだ。特にシリア内戦についての立場は真逆と言っていい。ロシアはアサド政権を支援して反体制派への空爆を続けている。一方のトルコはアサド政権の追放を主張し、反体制派を支援しており、この立場の隔たりは大きい。
ただトルコのシリア問題での焦眉の急はトルコが安全保障の重大な脅威と位置付けるシリアのクルド人勢力の台頭だ。シリアのクルド人勢力に対しては米国が武器を援助し、ISと戦わせている。ロシアも空爆でクルド人の勢力拡大に手を貸してきた。クルド人勢力は米ロの支援を利用し、トルコとの国境地帯に「自治区」の発足を宣言している。
トルコ国内の反政府クルド人組織を弾圧してきたエルドアン氏はシリアのこうしたクルド人の勢力拡大を安全保障上、看過できないと危機感を深め、ロシアにクルド人への支援をやめるよう要請した。これもプーチン氏との首脳会談の狙いの1つだった。
しかしこうしたエルドアン氏のロシア接近に対して、欧米から同盟国の結束を乱す利敵行為と懸念する声が上がっており、「トルコのNATOメンバーとしての資格に問題がないかどうか真剣な論議が起こっている」(アナリスト)。2人の独裁者の急接近は「NATO対ロシア」という構図を大きく変えることになるかもしれない。
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