2024年12月27日(金)

佐藤悦子 バランス・マネジメント

2010年2月2日

 ウェッジ・インフィニティ読者のみなさま、こんにちは。

 先週は、プロジェクトをマネジメントするうえで、私が気をつけていることの2つめのポイント「自分の軸をしっかりと保つこと」の大切さについて、ご紹介させていただきました。

 今週は、プロジェクトをスムースに進めるコミュニケーションのために私が常日頃、自分自身に言い聞かせるようにして、心がけている「過信しない」ということについてふりかえらせていただきたいと思います。

過信しない=知っている、伝わっていると思いこまない

 私はいつも仕事をするにあたって「この仕事は自分がいないと回らない」という過信にだけは陥らないようにしようと肝に銘じています。

 プロジェクトの全体像や流れに対して、冷静かつ客観的に管理進行していくこと、必要に応じて役割の範囲内で意見や提案もまじえていくことが私の仕事だとお話しして参りましたが、私はクリエイターではないのでクリエイティブの内容について素人考えでものを言うのは危険ですし、今なされている議論の過程や裏側に、自分では考えつかないような深い思惑がある場合も少なくありません。そういうデリケートな神経をなくしたら終わりだということは、常々忘れないように努めています。

 ひとつの仕事を長く続けていると、だんだん流れも見えるようになっていきます。自分の立ち回り方も心得てきて、自分の判断に自信も育ってくるでしょう。

 けれどもそういうときほど、私は「過信に注意」と言い聞かせています。なぜなら仕事の大枠としては、同じようなステップを踏んでいくものであっても、そこに関わる人々が変わったり、そのプロジェクトごとに目指すものというのは、たとえ同じクライアントの仕事であっても、絶えず状況が変化したりしているわけです。ビジネスのステージで直面するのは、いつでもそのとき特有のケースであって、過去と全く同じものはないように感じられます。

 前回もお話しさせていただいた通り、SAMURAI「サムライ」のプロジェクトでは、佐藤可士和のクリエイションを通して既存の枠組にとらわれない新しい価値を世の中に提示して、社会が少しでもよい方向にいく一端を担いたいと願っています。これも毎日が新しいシチュエーションと思えるような仕事に関わる理由の一つかもしれません。

イチから積み上げていく 

 そもそも、どのようにして私がこのような心構えを大事に考えるようになっていったかといいますと、私はこれまでに3回の転職をしており、その都度いつでも「自分は完全部外者で、素人だ」という自覚を否が応でもつきつけられてきました。


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